研究課題/領域番号 |
16J05933
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥田 綾 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | ダイズ / 種子貯蔵タンパク質 / ジスルフィド結合 / 酸化的フォールディング / 酸化酵素 / 小胞体 |
研究実績の概要 |
本研究ではダイズ種子貯蔵タンパク質の立体構造形成のメカニズムの解明を目的とし、ダイズPDIファミリーの生体内での働きを明らかにしていく。今年度は以下の通り未解明のダイズPDIファミリーの機能解明を行うとともに、さらに発展としてダイズPDIファミリーの生体内での働きやダイズPDIファミリーの酸化酵素であるERO1との関係を明らかにした。 1) 膜結合型のダイズPDIファミリーと推定されるGmPDIL7がダイズ植物体組織において普遍的に発現し、小胞体の膜に局在することを示した。さらに、小胞体ストレスによりGmPDIL7のmRNA発現量が増加することを明らかにした。 2) ダイズPDIファミリーのうち未同定であった低分子量のGmPDIL6を同定し、酸化活性のみを持つことを明らかにした。そしてGmPDIL6が主にダイズ種子の子葉に発現していること、小胞体ストレスによりGmPDIL6のmRNA発現量が劇的に増加することを明らかにした。 3) ダイズPDIファミリーが生体内で複数の組み合わせで複合体を形成していることを見出すとともに、これら複合体を形成しているダイズPDIファミリーを組み合わせることで、タンパク質の酸化的フォールディング速度が上昇することを明らかにした。この結果から、複数のダイズPDIファミリーが生体内で複合体を形成することにより、それらが協働的に働いて効率的に基質タンパク質の酸化的フォールディングを行うことが示唆された。さらに、in vitroでGmERO1aが複数のダイズPDIファミリーの活性中心を酸化することを明らかにするとともに、GmERO1aには活性中心システインとジスルフィド結合を形成することで不活性化する制御システイン残基が存在し、このGmERO1aの不活性型-活性型の変換がダイズERO1aの基質であるダイズPDIファミリーによって行われることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画通り、GmPDIL7がダイズ組織に普遍的に発現している小胞体局在性の膜タンパク質であり、小胞体ストレスで誘導されることを明らかにした。また、新規PDIファミリーGmPDIL6を同定し、その酵素学的特性を解明した。そして、小胞体内でPDIファミリーが複数の組み合わせで複合体を形成していることを見いだした。 さらに、これらの成果を踏まえて研究を進展させ、PDIファミリー活性化酵素GmERO1aが複数のPDIファミリーの活性中心を酸化することを明らかにした。また、GmERO1の活性中心システインとジスルフィド結合を形成することで不活性化する制御システイン残基が存在することを明らかにするとともに、ERO1aの不活性型-活性型の変換がダイズERO1aの基質であるダイズPDIファミリーによる還元反応によって行われており、GmERO1aとPDIファミリーの活性中心システイン間でのチオール/ジスルフィドの平衡により両者の活性制御が行われていることを発見した。 これらの結果から、複数のダイズPDIファミリーおよびGmERO1が協働的に働いて効率的に基質タンパク質の酸化的フォールディングを行うことが示唆され、植物における小胞体でのタンパク質フォールディングの分子機構の解明に大きく寄与する成果を上げたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、小胞体で協同的に働くダイズPDIファミリーおよびGmERO1の分子機構を解明する為、以下の計画に従い研究を推進していく。 1) 生体内でもダイズPDIファミリーによるGmERO1aの不活性型-活性型の変換が行われているかどうかを調べる為、PDI活性阻害剤を添加したダイズ培養細胞に対してウエスタンブロッティング分析を行う。 2) 架橋剤処理を行ったダイズ種子及び培養細胞から抽出したタンパク質に対して、Blue Native-PAGEとSDS-PAGEの二次元電気泳動法を行うことで、ダイズPDIファミリーを含む巨大なタンパク質立体構造形成装置の構成因子を同定する。
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