研究課題
近年,遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)を用いた面内ヘテロ接合の作製が可能になり、接合界面での新しい一次元電子系等の実現が期待されている。そのような研究に向けては、作製される試料の構造を微細に制御することが非常に重要な要素であり、解決していくべき課題である。この課題の解決に向け,我々は,原料供給の高い制御性がある有機金属原料を用いる有機金属科学気相成長(MOCVD)による合成法の開発を進めてきた。本研究では、その原料供給の制御性を活かし、TMDCナノリボンの作製法を確立し、その構造を評価、合成メカニズムを推察した。通常の合成条件である、原料比のMo:Se=50:50では、三角形の結晶が作製されるが、100:50と相対的にMoを増やすと、リボン状の結晶が成長することが明らかになった。40 nm程度と非常に細いナノリボンも成長可能である。透過電子顕微鏡観察によると、MoSe2リボンは長軸に沿って4員環チェーンの結晶粒界が試料中心に存在し、ツイン構造であることが明らかになった。この結果から、Moを相対的に増やすと4員環の初期クラスターが形成することがリボン成長に重要であると考えられる。次に、MOCVDで一般的に促進剤として用いられるNaCl等のアルカリ金属ハライドの効果を解明した。我々は、アルカリ金属ハライド中のアルカリ金属が主に促進剤として重要な役割を果たしていることを見出した。アルカリ金属化合物を用いることで、グレインサイズや単層率が向上・核密度が低下した。さらに、走査トンネル顕微鏡観察から、不純物密度も同時に下がっていることがわかった。そして、このアルカリ金属は、350℃と非常に低温下の成長でも効果を発揮し、そのトランジスタのon/off比も、未使用の2~3から~1000と大幅に向上した。本成果は、TMDCを用いた様々なナノ構造の作製につながると期待される。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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