研究課題/領域番号 |
16J05954
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森内 剛史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 運動観察 / ミラーニューロンシステム / 大脳皮質運動野 / 経頭蓋磁気刺激 / 運動誘発電位 / スローモーション |
研究実績の概要 |
本研究は,動作速度の異なる2つの課題映像を運動観察する際に,再生速度の違いが大脳皮質運動野(M1)の興奮性へ及ぼす影響とミラーニューロンシステム(MNS)の関与について明らかにすることを目的としている.平成28年度の研究計画では経頭蓋磁気刺激(TMS)によって誘発される運動誘発電位(MEP)を指標として単発刺激を用いた運動観察中のM1の興奮性変化の探索(実験1)と,2連発刺激法を用いた神経ネットワークの探索(実験2)について検討することであった.しかし,実験1を終えた時点で新たな検討事項が生じたため,研究計画を一部変更し,本年度は実験1と追加実験のプロトコール作成を実施した. 実験1では,運動観察課題として素早い動作には“正面から投げられたボールをキャッチする動作”を,ゆっくりとした動作には“正面の机の上に置かれたボールに手を伸ばして持ち上げる動作”を採用した.この課題映像を異なる映像再生速度(SLOW:1/2倍速,NORMAL:1倍速,FAST:2倍速)で運動観察させ,再生速度の違いがM1の興奮性に与える影響について検討した.被験筋は,第一背側骨間筋(FDI)と小指外転筋(ADM)とした.その結果,素早い動作課題では再生速度を遅くすることで運動観察中のMEPが筋特異的に増大するが,ゆっくりとした動作課題では再生速度の影響を受けないことが明らかとなった.また,再生速度の影響は支配筋肉で異なることが明らかとなった.素早い動作課題でのみ再生速度の影響を受けることについては,再生速度が遅くなることで,肉眼では認識できなかった運動の要素等について認識が高まることでMNSがより活性化する可能性が示唆された.また,ADMのみ再生速度の影響を受けることについては筋の機能の違いによる可能性が示唆された.上記の研究結果は,学術論文として国際誌に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に計画していた観察する映像の再生速度の操作によって変化させた動作速度の違いが運動観察中のMNSに関連したM1の興奮性変化に与える影響について経頭蓋磁気刺激を用いた検討については,当初の単発刺激での検討(実験1)と2連発刺激での検討(実験2)の結果を踏まえて論文執筆する予定であった.実験1を終えた時点で,運動観察時に異なる動作速度の映像提示を行う際に,撮影する実動作自体の速度を変化させた場合と,同一速度の動作を再生速度の操作によって速度変化させた場合の違いについて検討する新たな課題が生じた.これにより,研究計画を一部変更し追加実験を実施する必要性があったため,実験2を遂行するまでには至らなかった. 研究計画に変更があったものの,追加実験のプロトコールを作成し,実験する段階まで至ったことや,実験1の結果を国際誌に投稿し掲載された点を考慮すると,これまでの研究はおおむね順調に進展しているものと考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては,追加実験として運動観察時に異なる動作速度の映像提示を行う際に,撮影する実動作自体の速度を変化させた場合と,同一速度の動作を再生速度の操作によって速度変化させた場合の違いについての検討を実施し,その結果を国内および国際学会で発表し,学術論文としてまとめ国際誌へ投稿する予定である. その後,実験1ならび追加実験で得られた知見をさらに検討するために,当初予定していた実験2を行い,観察する映像の提示速度の違いがM1の興奮性に及ぼす影響と脳内の活性化について検討していく.
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