研究課題/領域番号 |
16J06044
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
湖城 恵 上智大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 画像処理 |
研究実績の概要 |
研究課題「画像処理技術を用いたオルガネラ形態の自動計測」を達成するため、初年度である平成28年度には新規に画像処理プラットフォームの雛形を作成した。当初の研究計画では、画像処理の実行環境としてフリーの画像処理ソフトウェアであるImageJを用いる予定であり、アルゴリズムはプログラミング開発言語JavaによるImageJ pluginとして開発予定であった。ImageJ pluginはJavaの実行ファイルとしてソフトウェアを作成するため配布が容易であり、加えてImageJのユーザーインターフェイスが利用できる利点を有する。一方で、ImageJのユーザーインターフェイスは自由度が低いため、画像処理の初学者にとっては利用しづらい側面を有している。そのため、プログラミング開発言語Pythonと画像処理用ライブラリOpenCV3を動作基盤とする新規の画像処理プラットフォームを作成した。 平成29年度においては、新規画像処理プラットフォームを開発段階から配付段階へ遷移させるため、下記2項目について研究・開発を行なった。 1.画像処理の初学者でも容易に活用できるユーザーインターフェイスの開発 2.新規開発画像処理プラットフォームを用いた粒子解析および画像分類の機能検証 上記の研究成果は、文部科学省科学研究費助成事業・新学術領域研究・学術研究支援基盤形成「先端バイオイメージング支援プラットフォーム」で支援を受けた東京大学馳澤研究室グループおよび、画像解析を得意とする東京大学発ベンチャー企業エルピクセル株式会社と共同し、Nature系列学術雑誌であるScientific Reportsへ投稿し、現在審査中である。本誌はオープンアクセス誌であるため、掲載受理された場合には無償で論文を閲覧することが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ImageJやPhotoshopといったこれまでの初学者用画像処理ソフトウェアは、網羅的に実装されたメニュー項目中から目的とする機能をプルダウンン形式で選択するユーザーインターフェイス (UI) を有している。このユーザーインターフェイスは機能一覧の視認性に富むが、目的とする機能を取捨選択するための学習コストが大きく、画像処理初学者にとっては使いやすいUIではない。そのため、新規のUIを開発・実装した。これら新規画像処理プラットフォームの開発成果により、現時点では画像処理の経験がない初学者においても高度な画像処理手法を提供することが可能となった。 加えて、本申請課題の要であるオルガノ形態の定量解析機能を評価するために、培養細胞におけるストレス顆粒の個数・形態解析評価を行なった。哺乳類培養細胞を亜ヒ酸ナトリウムで処理すると時間依存的にストレス顆粒が産生されることが報告されている。そこで、亜ヒ酸ナトリウム処理時のストレス顆粒を手動でトレースした結果と新規画像処理プラットフォームによる定量解析を比較した。その結果、新規画像処理プラットフォームを用いて、手動による評価と同様の結果をより定量的かつ高速に取得できることが示された。 上記の結果から、画像処理に関し高度な知識を有さない初学者においても定量的な画像処理を施す環境整備が進みつつあり、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究成果によって得られた成果を持って、日本特許庁へ特許申請を行ない、現在審査中である。将来的には特許協力条約に基づき欧米・アジア主要国 (最大130ヶ国) での特許申請を行なう予定である。併せて、本画像処理ソフトウェアが配付段階になれば、画像処理手法の講演等により紹介し、スムーズな導入を目指す。 本研究成果により、これまで画像処理の基礎的な知識不足により、定量評価を行なうことが困難であった多くの生命科学系研究者に対し、定量的な解析を可能にさせるため学術界および産業界に大きなインパクトを与え得ると予想される。
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