研究課題
本研究は以下の3つを研究目的としている.(1)ソフトウェアによるシステム構築では実現不可能な計算コストが高い処理をハードウェア状に実装することで1,000倍以上の処理高速化を行い,消化管内視鏡リアルタイム診断支援が実現できること.(2)内視鏡画像識別を高精度,高速に行うことで定量的かつ客観的指標による医師に対する診断支援が十分有効であり実用に足ること.(3)局所的特徴量と大局的特徴量とを組み合わせた消化器官の診断支援に有効な画像処理手法を開発し,システムが医歯を診断支援可能であること.診断支援システムは,医師が診断の際に用いる内視鏡システムの映像データを入力とし,再設計可能なハードウェア上の処理を経て,出力用モニタへその処理結果を表示する.診断支援システムは医療現場から要求される処理性能である,処理速度5 frame per second (fps),レイテンシ(処理遅延)1 秒以下,非腫瘍・腫瘍の識別精度90%以上を満たしている必要がある.本年度は提出した研究実施計画の3年次に該当する,大域的な特徴量抽出手法の開発に関して,Convolutional Neural Networkを用いた特徴抽出手法を提案した.具体的には,一般物体認識用に学習済みのモデルを使用し,内視鏡画像を入力した際に得られた中間データおよび出力データを用いる.これは,内視鏡画像の部位や患者によって多様に変化する病変から識別に有用な特徴量を抽出することを狙いとしている.また,提案手法のハードウェアシステム実装を行い,共同研究先とのコラボレーションによりハードウェアプロトタイプを開発した.
1: 当初の計画以上に進展している
本年度の研究進捗状況は,当初の計画以上に進展しているとと言える.前年度に引き続き大腸内視鏡リアルタイム診断支援システム改良を推進した.具体的には,システムの動画対応に向け,3年次に計画していた大域的な特徴量抽出の一手法として,Convolutional Neural Network (CNN)を用いる手法を提案し,その有効性を検証した.そして共同研究先である日本ケイデンス・デザイン・システムズ社と協力して,提案手法のシステム・アルゴリズム最適化を行い,ハードウェアプロトタイプ実装を行った.その研究成果は同社の日米ウェブページ共にプレスリリースされ,同社が開催している技術発信イベントであるCDNLive Japan 2017にてセッション講演を行った.更に,本研究成果に対し学会発表においてYoung Researchers Awardや優秀発表賞にも選ばれ,機械学習・コンピュータシステムの研究分野において新規性・重要性が高く評価されている.
今後の研究の推進方策としては,システムの動画対応に向けて更なるシステム改良を推進するとともに,拡大内視鏡画像だけでなく非拡大内視鏡画像への対応,また大腸だけでなく胃内視鏡画像に対するシステム適用を目指すことが挙げられる.非拡大内視鏡画像への対応のためには,非拡大モードで撮影された動画から学習のための画像・動画フレームを収集し,識別精度シミュレーションを行う.非拡大時には映り方が拡大時のそれとは異なることは勿論,ピントが合っていない部分を診断支援には不要な部分であると識別し医師へ提示することが重要となる.不要な部分を排除することで,より診断に重要な情報のみを医師へ表示する.胃内視鏡画像に対するシステム適用のためには,胃内病変の特徴を学習し識別器を構築することは勿論,胃内視鏡診断における大域的な内視鏡画像の評価が必要となる.例えば診察時に医師が注目している箇所やタイミングなどといった全体を見渡すような画像解析手法を構築する必要がある.このアプローチに対しては前年度推進したConvolutional Neural Networkによる特徴抽出が利用できないか試行し,課題抽出を行う.
Hiroshima University Research Team Accelerates the Development of a Computer-Aided Medical Diagnosis System with Cadence Tensilica Vision P6 DSP Core and Protium S1 FPGA-Based Prototyping Platform
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すべて 学会発表 (17件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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