研究実績の概要 |
超弦理論の低エネルギー有効理論として, どのようなクラスの模型が構築可能で, どのようなクラスの模型が構築不可能であるかを同定する研究が盛んである。重力がU(1) gauge群の力よりも弱いとするWeak gravity conjectureが提案されている。conjectureの帰結として, いくつかの仮定のもとに, 超弦理論のランドスケープの中で安定な超対称性を持たないAdS真空は存在しないことが分かる。私は素粒子標準模型がこのconjectureと矛盾するかどうかを詳しく調べた。 重力とU(1)理論の赤外構造に注目が集まっている。soft theorem, 漸近対称性, メモリー効果の間の関係が重力とU(1)理論だけでなく, カイラル対称性が自発的に破れたパイオンの理論にも存在することを示した。特に, 新しくパイオンのメモリー効果を提案した。さらに、無限遠でgauge parameterがdampしないlarge gauge transformationとsoft theoremが対応していることを示した。具体的には, large gauge transformationのWard-Takahashi恒等式としてsoft theoremが得られることを示した。 scalar暗黒物質を仮定し, ヒッグスインフレーションが起こると仮定した時に, テンソルゆらぎの値に対する下限値を求めた。暗黒物質の直接探索実験とtensorゆらぎ観測実験を合わせて, 我々の模型を検証することができる。 アクシオンと中性子星の衝突がfast radio burstの起源となっている可能性、将来のradio wave観測器でのアクシオンの検証可能性を検討した。結果, fast radio burstの起源となるためには信号が弱すぎること, しかし, 将来の観測で検証できる可能性があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はプランクスケールの物理と低エネルギー物理との関係性について包 括的に調べ上げた。特に、論文として発表した成果(の一部)は以下の通りである。 我々の世界を記述する素粒子標準模型がこのconjectureと矛盾するかどうかを詳しく調べ た。結果、準安定なAdS真空は存在するものの、安定なものは存在せず、標準模型はWeak gravity conjectureとは矛盾しないことが分かった。一方で、Multiple point principleを適用す るとニュートリノの質量パラメータと質量タイプを予言することができることを示した。 soft theorem, 漸近対称性, メモリー効果の間の関係が重力とU(1)理論だけでなく, カイラル 対称性が自発的に破れたパイオンの理論にも存在することを示した。特に、新しくパイオン のメモリー効果を提案した。対応する対称性はアクシオンのダイポール成分の各々の角度で の保存チャージで生成される対称性である。 無限遠でgauge parameterがdampしないlarge gauge transformationとsoft theoremがsoft 運動量のall orderで対応していることを示した。具体的には、large gauge transformationの Ward-Takahashi恒等式としてsoft theoremが得られることを示した。 以上のように``LHCの結果から探るプランクスケールの物理”という研究課題に基づき、高エネルギーの物理と低エネルギーの物理の関係に様々な角度から迫ることができたと考えている。
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