研究実績の概要 |
本年度は、マウス胎生中期におけるミクログリアの動態および機能について研究を進め、論文を2報発表した。1報目は、ミクログリアが神経前駆細胞の分化を促進し、Tbr2陽性の中間前駆細胞の数を増すということ、またそういった機能を十分に発揮するには、ミクログリアがCXCL12/CXCR4システム(CXCL12は脳室下帯に存在する中間前駆細胞が発現し、CXCR4はミクログリアが発現する)を介して脳壁内を広く移動することが重要であることを明らかにし、Genes to Cells誌に発表した。 続いて2報目では、脳発生・神経発生学の研究に汎用される子宮内電気穿孔法(in utero electroporation, IUE)の「プラスミドDNAを脳室に注入する」というステップによって、通常では脳壁全体に散らばって存在するミクログリアが脳室面近くに並ぶように集積すること、そしてこの変化は、ミクログリアが発現するToll様受容体9(Toll-like receptor 9, TLR9)のDNA認識によって引き起こされることを明らかにした。また、TLR9のアンタゴニストであるODN 2088をプラスミドDNAと同時に脳室内に注入することによって、ミクログリアの異常な集積が緩和されることを見出した。この成果はeNeuro誌に発表し、また同誌のコミュニティサイトのeNeuro blogにおいてEditor’s picksとして取り上げられた。 一方で、本課題開始時より取り組んでいるミクログリアの時期依存的な分布変化のメカニズムとその意義に関して論文をまとめ、投稿した。現在、in revisionの段階であり、追加実験を進めている。
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