研究課題/領域番号 |
16J06211
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
矢菅 浩規 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 液滴 / 表面張力 / 微細加工 / MEMS / Microfluidics |
研究実績の概要 |
【2次元液滴アレイの細胞死アッセイへの応用】前年度開発した液滴アレイ生成技術は、水成分を連結状態から迅速に液滴アレイに分離可能という特徴を有する。このため、連結状態で形成した試薬の濃度勾配など、アレイの位置によって変わる内容物の条件は液滴アレイにも引き継がれ、異なる条件を有する液滴のアレイの生成が可能である。これは、新薬の効果を示す指標となるIC50の特定など、一度に多くの条件を調査する研究において、非常に有用性が高いと期待できる。シクロヘキシミドという細胞のタンパク質合成を阻害する試薬の濃度勾配を含む液滴アレイを生成し、Sf9細胞という昆虫細胞の生死アッセイを行った。はじめに、Sf9細胞を含む培地をウェルアレイ全体に浸透させた。続いて、ウェルアレイに接触する部分から高濃度のシクロヘキシミド水溶液を拡散させた。30分後シリコーンオイルが加えられ、液滴のアレイが生成された。培養24時間後シクロヘキシミドの濃度上昇に沿ってSf9細胞の死亡率の増加が見られた。この結果から、異なる試薬の濃度の細胞死アッセイが一チップ上で行えることが示された。本成果はLab on a Chip誌に掲載された。 【3次元での液滴生成方法の確立】申請者は以前KTHに留学し、やぐら状に連結し合うピラー構造を発表した。このやぐら状構造内には双四角錐状のピラー構造の連続的なパターンが存在する。この構造全体に水・油成分を順次導入することで、双四角錐内部に液滴を生成できると考えた。やぐら状構造はOSTEというフォトレジストに4方向からUVを照射することで製作された。水溶液を満たし、続いて鉱油を加えることで、3次元での液滴生成に成功した。この成果は特別研究員を口頭発表者として国際学会MEMS2018で報告された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元での液滴アレイ生成技術を細胞の生死アッセイに応用し、新薬の効果を示す指標となるIC50の特定などへの応用可能性を示唆した。この成果はLab on a Chip誌に採択され、PCT国際特許出願も果たした。また、微小化のためウェルアレイの作製方法を修正し、その成果を国際学会Transducers2017でポスター発表した。 本年度の研究課題であった3次元での液滴生成方法の確立は、スウェーデン王立工科大学(KTH)との共同研究により達成された。平成29年度後期からKTHに滞在し研究を行い、半年という短い期間でありながら3次元のやぐら状構造中での液滴生成に成功した。現地の共同研究者のWouter van der Wijngaart先生の指導の下、MEMS2018学会に採択され特別研究員が口頭発表を行った。以上のように、当初の計画の達成がなされたため進捗は順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に得られた3次元での液滴生成技術を、人工細胞膜及び3次元液滴ネットワークに拡張する。1層の液滴アレイを多数用意し、それらを重ね合わせることで人工細胞膜の3次元アレイ及び組織状材料を創出する。
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