研究課題/領域番号 |
16J06224
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
森 将輝 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 視線知覚 / 数理モデル / 幾何学的性質 / 自閉症児 / アフィン変換 / 発達障害児 / 共同注意 |
研究実績の概要 |
本研究は、共同注意の知覚的基盤とその発達的変化を解明し、自閉症児の早期発見に向けた萌芽的研究を行うことを目的としている。共同注意の中でも、特に、視線による手がかりに着目している。 3年計画の第1年度にあたる本年度は、大きく分けて以下の2つのことを実施した。 1つ目は、視線知覚空間がどのような性質を持つ空間であるかを見いだすことである。この目的を果たすために、物理空間と視線知覚空間の間に最適な数理モデルを構成することを試みた。最適な数理モデルの探求は、現実の知覚に即した計量的性質の探求に繋がるからである。具体的には、アフィン変換と呼ばれる写像関数を用いて実際の空間からデータを予測していくことで、どの程度データを説明できるかを検討した。その結果、アフィン変換は物理空間から視線知覚空間を説明するのに比較的妥当な数理モデルであることが示唆された。さらに、視線知覚空間に空間の異方性があることを見いだした。この結果の一部を、横浜で行われた国際会議International Congress of Psychology 2016において英語による口頭発表を行った。現在、論文を投稿準備を大方終え、最終チェック段階にある。 2つ目は、次年度以降に発達障害児の視線知覚特性を調べるために行った準備である。具体的には、実験に必要な実験プログラムを作成した。Visual Basicと呼ばれるプログラミング言語を用いて実験プログラムを作成し、プログラムをVisual Studio 2016aで実行できる環境を構築した。本研究計画に必要な実験プログラムがすでに完成したことから、次年度よりすぐにでもデータを取得できる環境が整いつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、視線知覚空間の計量的な性質に関する口頭発表1件(国際学会)、視線知覚に関するデモンストレーション1件(企業・一般向け研究集会)を行った。口頭発表を行った内容をさらに発展させ、論文にまとめたものが投稿間近である。本研究プロジェクトが開始してから1年間で残した成果としては、十分なものである。当初の研究計画よりも、発達障害児の募集へ向けて動き出せており、調査の開始時期が早まる可能性も出てきている。したがって、今後の研究が当初の期待以上に進展していく可能性を秘めている。当初の予定は、Psychtoolbox (Brainard, 1997) と呼ばれるプログラミング言語を用いて実験プログラムを作成し、作成したプログラムをMATLABで実行することであった。しかし、児童を募集予定である外部機関で実施しやすい環境を構築する中で、当初の計画を変更して、Visual Basicを用いて実験プログラムを作成した。当初計画していたプログラミング言語を用いることにより生じる問題に対しても、他のプログラミング言語を用いることでその問題を解決し、研究計画を着実に遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画2年目にあたる次年度は、以下の3点を行う予定である。 1つ目は、よりデータを予測することのできる数理モデルを見いだしていくことである。 2つ目は、大学生を対象に、構築した実験プログラムを用いて実験を行うことである。 3つ目は、発達障害のある児童を対象に、構築した実験プログラムを用いて実験を行うことである。 これらのデータや解析結果、研究計画1年目に得られた成果をもとに、国際学会での発表1件、国内学会での発表3件を行い、論文を2本投稿する予定である。
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