研究課題/領域番号 |
16J06236
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
榊原 正太郎 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | ネクチン / アファディン / 細胞間接着 / 増殖因子受容体 / 分子間相互作用 / シグナル伝達 / 細胞極性 / 上皮組織形態形成 |
研究実績の概要 |
乳腺の乳管や乳腺葉を構成する上皮組織は一層の乳腺上皮細胞と周囲を覆う筋上皮細胞からなる二層構造をなしている。この二層上皮組織の形成と維持におけるホルモンや増殖因子の機能と作用機構は解明されてきているが、細胞間接着装置の物質的基盤と機能は不明であった。研究代表者は乳腺上皮細胞と筋上皮細胞間に細胞接着分子ネクチン-1とネクチン-4を介する全く新しい細胞間接着装置を見出した。さらに、この新規細胞間接着装置が妊娠時乳腺の発達に重要なホルモンであるプロラクチンのシグナル伝達の場を提供していることを明らかにした。ネクチン-1欠損マウスでは、この接着装置が消失し、妊娠に伴う乳腺の発達障害と乳汁の産生障害が認められた。また、ネクチン-4とプロラクチン受容体が相互作用し、その下流のJAK2-STAT5経路を制御していることを明らかにした。 平成28年度はネクチン-4レポーターマウスとネクチン-4欠損マウスのラインの樹立が完了し、解析を開始した。ネクチン-4欠損マウスの乳腺では、野生型マウスで観察されたネクチン-1と-4を介するヘテロフィリックな細胞間接着装置が消失していたが、機能的な異常は認められず何らかの機構により代償されている可能性を示唆する結果を得た。また乳腺の上皮構造の解析により明らかとなったネクチン-1の役割が、他の外分泌腺においては異なっているかを検討したところ、顎下腺においては乳腺と異なり、ネクチン-1はネクチン-4ではなく他の分子との結合を介して細胞間接着装置を形成し機能していることを示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、1. 新たに作成したネクチン-4レポーターマウスとネクチン-4欠損マウスを用いてネクチン-4の役割を解析するとともに、2. 乳腺の上皮構造の解析により明らかとなったネクチン-1の役割が、他の外分泌腺においては異なっているかを検討することを計画していた。前者については、ネクチン-4欠損マウスにおいては、ネクチン-1と-4を介するヘテロフィリックな細胞間接着装置の消失の効果が、何らかの機構により代償されている可能性を示唆する結果を得た。また後者については、顎下腺においては乳腺と異なり、ネクチン-1はネクチン-4ではなく他の分子との結合を介して細胞間接着装置を形成し機能していることを示唆する結果を得た。したがって、本研究課題は期待通り順調に進展しており、今後の発展が期待できると考えている
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、前年度に明らかとなった、ネクチン-1とネクチン-4を介するヘテロフィリックな細胞間接着装置の消失の効果に対する代償機構について、ネクチン-1と-4およびその関連分子の相互作用が果たす役割と分子機構を解析する。研究代表者らはこれまでにネクチン-1はネクチン-1とのホモフィリックな結合活性だけでなく、他のネクチンやネクチン様分子とヘテロフィリックな結合活性をもち、これらの結合が細胞内における広範なシグナル伝達機構に影響を及ぼすことを報告している。前年度に申請者が見出した、顎下腺におけるネクチン-1を介した細胞間接着装置の形成による顎下腺の形態形成と維持の機構について、シグナル伝達などの観点から包括的な解析を行うことにより、管腔上皮組織の形成と維持の機構についての普遍性と多様性を明らかにすることを目指す。
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