極性を形成した上皮細胞は、隣り合う細胞が細胞間接着装置により結合し、上皮シートを構築する。細胞間接着装置は細胞内においてアクチン結合タンパク質を介してアクチン細胞骨格によって裏打ちされており、このアクチン細胞骨格は細胞間接着装置の形成と維持および機能の制御に関与している。細胞間接着装置形成においては、ネクチンを介した細胞間接着装置の形成により、カドヘリンやクローディンなどを介した細胞間接着装置の形成が促進されることが知られていた。研究代表者は平成28年度までに、遺伝子改変マウスを用いた形態学的、機能的解析によりネクチン-1欠損マウスにおいて、細胞間接着装置の異常が認められるとともに、妊娠に伴う乳腺の発達障害と乳汁の産生障害が認められることを明らかにしていた。平成29年度はネクチンを介した細胞間接着装置におけるアクチン結合タンパク質であるl-アファディンのアクチン結合活性の役割を解析した。研究代表者はゲノム編集技術のCRISPR/Cas9法を用い、マウス乳腺上皮細胞株であるEpH4細胞においてアファディンノックアウトEpH4細胞を作製し、l-アファディンが細胞間接着装置の形成促進に必要であることを明らかにした。さらにl-アファディンによる細胞間接着装置の形成促進においては、そのアクチン結合活性が必要であることを明らかにした。これらの研究成果はGenes to Cells誌に掲載された。
|