研究課題
本研究では、これまでヒト足部に内在する生得的な変形動態を明らかにすることを試みてきた。そのために二方向X線透視装置を用いた屍体足静荷重実験を行い、鉛直荷重下におけるヒト足部の3次元的な骨運動と、二足歩行との関係について考察を行った。その結果、ヒト足部では荷重下で踵骨が外反すると距骨・脛骨が内旋する特徴的な協調運動が生じること、さらにこの時前足部では外旋運動が生じ、このような足部の水平面内の変形が安定した直立二足歩行を実現する上で重要であることが示唆された。この結果について7月に国際会議で口頭発表を行った。また学術論文に投稿し、掲載された。さらに、ヒト足部の歩行機能を類人猿足部との比較解析により明らかにするために、チンパンジーとゴリラの屍体足を用いて同様の荷重計測を行った。現在、チンパンジー足部4体、ゴリラ足部3体のX線透視計測とその解析を行った。その結果、まずヒト足部で観察された踵骨の外反運動が他の類人猿足部では生じないことがわかった。これは踵骨の形態がヒトと他の類人猿で大きく異なることに起因すると考えられる。この踵骨の運動の違いによって、距骨や脛骨の内旋運動が類人猿足部で相対的に小さくなることがわかり、ヒト後足部の協調運動が直立二足歩行の生成に寄与していることが示唆された。また、ヒト足部では踵骨に対する立方骨の可動性が相対的に低く、ヒト足部が生得的に硬い踵立方関節を有していることがわかった。最後に、類人猿足部では距骨と脛骨の内旋運動だけでなく、前足部の外旋運動が相対的に小さく、この足部の水平面内の運動の違いもまた、直立二足歩行運動にとって重要であると考えられる。この結果について11月に国内の学会において口頭発表を行い、現在論文を執筆中である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Royal Society Open Science
巻: 4 ページ: 12pages
10.1098/rsos.171086