研究課題
1. RAD54の相互作用因子の同定と機能解析シロイヌナズナのDNA損傷応答において、RAD54は損傷クロマチン領域特異的に集積することで、DNA修復フォーサイを形成する。しかし、RAD54が損傷領域を認識する分子メカニズムは不明である。RAD54が損傷部位を認識するには、損傷領域のヒストン修飾やクロマチンリモデリングが重要な役割を果たすと推測して、RAD54と共に機能するクロマチン構造制御因子の同定を試みた。DNA損傷の一種であるDNA二本鎖切断を誘導するγ線を照射したシロイヌナズナから共免疫沈降により回収したRAD54複合体を質量分析に供試して、相互作用因子をリストアップした。その中には既知のRAD54相互作用因子の他に、細胞周期キナーゼ、核膜因子、核小体因子、DNA・RNAヘリカーゼ、そしてヒストン修飾酵素が含まれていた。ヒストン修飾酵素のうち、あるヒストン脱メチル化酵素に関してはベンサミアナタバコを用いたBiFCアッセイでもRAD54との相互作用が確認できた。このヒストン脱メチル化酵素の変異株はRAD54変異株と同様にDNA架橋剤マイトマイシンCに対して高感受性を示した。また、レポーターアッセイにより、変異株では相同組換えの活性が低下していることがわかった。これより、この変異株はクロマチン構造の変換を介して、相同組換えを正に制御していることが示唆された。2. DNA損傷応答に機能するクロマチン構造制御因子の逆遺伝学スクリーニングDNA損傷応答におけるクロマチン構造変化の機能的意義をより詳細に明らかにすべく、クロマチン構造制御因子の変異株ライブラリーを用いた逆遺伝学スクリーニングを行った。その結果、根の伸長においてDNA二本鎖切断に対して異常な感受性を示す変異株を単離することができた。
2: おおむね順調に進展している
1. RAD54の相互作用因子の同定と機能解析RAD54の新規相互作用因子としてヒストン脱メチル化酵素を同定することができたため。2. DNA損傷応答に機能するクロマチン構造制御因子の逆遺伝学スクリーニングDNA損傷応答に異常を示すクロマチン構造制御因子の変異株を単離することができたため。また、発現パターンや細胞内局在を解析するための形質転換株の作製が完了したため。
1. RAD54の相互作用因子の同定と機能解析シロイヌナズナDNA損傷応答におけるRAD54の新規相互作用因子としてヒストン脱メチル化酵素を同定した。今後は、このヒストン脱メチル化酵素の標的ヒストン修飾の変動がDNA損傷応答、とりわけ相同組換えにどのように寄与するかを調べる。まず、RAD54と標的ヒストン修飾の親和性をペプチドプルダウンアッセイにより検証する。そのために、RAD54をin vitroで合成して、ヒストン修飾された人工ペプチドを用意する。また、相同組換えが生じた際のヒストン修飾の変化をクロマチン免疫沈降及び定量PCR(ChIP-qPCR)法によって調べる。材料には、薬剤添加により部位特異的に相同組換えを誘導できる形質転換株を用いる。研究成果をまとめて、論文投稿する。2. DNA損傷応答に機能するクロマチン構造制御因子の逆遺伝学スクリーニングシロイヌナズナDNA損傷応答における新規クロマチン構造制御因子を単離した。今後は、このクロマチン構造制御因子と既知のDNA損傷応答因子の関係解析を行う。変異株におけるDNA損傷応答因子の発現量や、多重変異株のDNA損傷に対する感受性を調べる。また、クロマチン構造制御因子の標的遺伝子を網羅的に同定するために、RNA-seqとChIP-seqの統合解析を行う。ChIP-seqの材料には既に作製した構造因子を蛍光標識した形質転換株を用いる。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)