研究課題/領域番号 |
16J06425
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
三上 雅史 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / CRISPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
植物におけるCRISPR/Cas9を用いた発現系では、Sterptococcus pyogenes由来のCas9(SpCas9)をRNA polymerase II プロモーターを発現させ、gRNAをRNA polymerase III プロモーター(Pol III-pro)で発現させるのが一般的であるが、Pol III-proに関する植物の知見は少なく、組織特異的や誘導的にgRNAを発現させることは難しい。本研究では、Pol III-proを用いらずに、組織特異的や誘導的にSpCas9とgRNAを発現させる高精度な植物のゲノム編集を行うことを目的とした。本年度は、リボザイム配列を用いてSpCas9とgRNAを1つの発現カセットとして発現させるCRISPR/Cas9ベクター (SpCas9-rz-gRNA) の構築を行った。イネカルスを用いてgRNAのノーザンブロット解析や標的変異効率の解析により、リボザイムによる自己切断でSpCas9遺伝子のmRNAから切り出されたと考えられるgRNAのシグナルが検出され、さらに、作製したSpCas9-rz-gRNAベクターでは、高効率で標的変異が可能であることを明らかにした。また、標的配列の選択の幅を広げるために、SpCas9(認識配列:NGG)以外のRNA-guided nucleaseとして、SpCas9よりも小型のStaphylococcus aureusに由来するCas9(SaCas9, 認識配列:NGGRRT)やFrancisella novicida由来のCpf1(FnCpf1, 認識配列:TTN)を用いた標的変異を行った。イネにおいてSaCas9とFnCpf1をそれぞれ用いたところ、標的変異が可能であったため、リボザイムでgRNAと1つの発現カセットにしたSaCas9とFnCpf1のベクターを作成し評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、リボザイム配列を用いてSpCas9とgRNAを1つの発現カセットとして発現させるSpCas9-rz-gRNA ベクターを構築した。リボザイム配列+gRNA配列の最適な導入位置を選定する際、マーカー遺伝子と並行してSpCas9遺伝子の5’末端と3’末端にそれぞれリボザイム配列+gRNA配列を導入したベクターを作製し評価したことで、迅速にSpCas9-rz-gRNAベクターを構築することができた。また、SpCas9遺伝子のmRNAがリボザイムで切断された場合、mRNAが不安定になり、自己切断されたmRNAが正常なSpCas9タンパク質へと翻訳されない可能性がある。そのため、複数のリボザイム配列から、ゲノム編集に適した自己切断効率を持つリボザイム配列を選定する予定であったが、本研究で最初に選定したリボザイム配列で、SpCas9遺伝子のmRNAから切り出されたと考えられるgRNAのシグナルが検出され、さらに作製したSpCas9-rz-gRNAベクターはイネにおいて高効率で標的変異が可能であった。そのため、リボザイム配列の検討を省略し、次年度の計画であるSpCas9-rz-gRNAベクターを用いた組織特異的なプロモーターや誘導的プロモーターを用いたゲノム編集の研究の準備を行い、評価を進めることができた。したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム編集の分野は飛躍的に発展している分野であるため、リボザイムを用いてSpCas9とgRNAを1つの発現カセットにするほぼ同じ研究の成果が平成28年度中にMolecular Plant誌に中国のグループから報告された。平成29年度以降の研究計画にある組織特異的や誘導的プロモーターへの応用は報告されていないため、SpCas9-rz-gRNAベクター完成と同時期に、シロイヌナズナで組織特異的な標的変異、イネにおいて誘導的な標的変異を進めて行った。組織特異的なプロモーターや誘導的プロモーターによる標的変異にそれぞれ成功したが、汎用性や高効率化のためのブラッシュアップは今後行う予定である。
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