研究課題/領域番号 |
16J06495
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
竹下 和貴 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | ニホンジカ / 個体群動態 / 個体数推定 / 森林生態系 / 植生回復 / 次世代シーケンサー |
研究実績の概要 |
平成28年度は本研究課題におけるコアサイトである神奈川県の丹沢山地にて、主に以下の2つの課題について重点的に取り組んだ 1.ベイズ状態空間モデルを用いたニホンジカの密度推定 丹沢山地に生息するニホンジカ個体群を対象に、神奈川県によって設定された56の管理ユニットごとの個体群動態を、時空間的な欠測を含む3つの密度指標(区画法、糞塊法、目撃効率)をベイズ状態空間モデルによって統合することによって推定し、景観レベルでのシカ類の管理における限局的な捕獲が密度変化に及ぼす影響を評価した。その結果、捕獲圧の強さはそのユニットのその後の密度減少量と相関関係を示さないことが分かった。本解析に使用したユニットの空間スケールの大きさから、このような不鮮明な捕獲成果はニホンジカの移動の影響を大きく受けていると考えられ、シカ類の移動のモニタリング、および景観構造や土地の所有権に縛られない、広大な管理エリアの設定の重要性を強調する結果を得ることができたと考えている。 2.次世代シーケンサーを用いたDNAバーコーディングによるニホンジカの採食物の解析 2016年5-6月において、丹沢山地に生息する春季のニホンジカの胃内容物の採取を行った。そして、2015年度に既に採取していたものと合わせた計30の胃内容物サンプルから、葉緑体rbcL領域の抽出およびPCRを行った。本解析は、植物の芽生えの時期にあたる春季におけるシカ類の選択的な採食行動が植生回復の遅れにもたらす影響を検討するための貴重な試みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベイズ状態空間モデルを用いたニホンジカの密度推定結果については、既に研究内容のまとめが完了している。2016年9月の日本哺乳類学会において口頭発表を行った後、現在は国際誌に投稿中である。 次世代シーケンサーを用いたDNAバーコーディングによるニホンジカの採食物の解析については、PCRを効率的に行うことができる酵素の探求に、計画当初に想定していた以上の時間を要したが、2016年度中に次世代シーケンサーを用いたPCR産物の解析まで終えることができた。現在はデータの解析(バーコーディング)中である。平成29年度は本研究内容のとりまとめ、及び国際誌への投稿に優先的に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で本研究課題に必要なデータは概ね収集を終えることができた。次年度は論文の執筆、学術誌への投稿に注力していきたい。
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