研究課題/領域番号 |
16J06515
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 浩之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 6次元超共形場理論 / 量子異常 |
研究実績の概要 |
(1) 6次元超共形場理論のインスタントン弦の量子異常。6次元超共形場理論は、真空のモジュライ空間のテンソル枝と呼ばれる部分空間上で、ひも状に広がったソリトン的な励起を持つことが知られています。このソリトン的な弦は、モジュライ空間の特異点において非常に軽く、強く相互作用するようになり、特異点において実現される超共形場理論の基本的な自由度であると考えられています。よって、この弦の性質を理解することは、6次元超共形場理論が実現されるメカニズムを明らかにする上で重要です。私は、受入研究員の立川教授と共に、このソリトン的な弦の世界面上の2次元(0,4)理論について調べ、理論の自由度の数にあたる物理量である中心電荷を計算する一般公式を発見しました。本結果は論文にまとめられ、査読の上、雑誌Journal of High Energy Physicsに刊行されました。 (2)Higgs枝上のアノマリ計算。6次元超共形場理論の一つである例外型弦理論は、真空のモジュライ空間のHiggs枝と呼ばれる部分空間がE8群の1-インスタントンモジュライ空間と同型になることが知られています。このように、真空のモジュライ空間のHiggs枝が、あるリー群の1-インスタントンモジュライ空間と同型になるような超共形場理論の例は、様々な時空次元で知られていました。私は、受入研究員の立川教授、およびKavli IPMUの研究員であるGabi Zafrir氏と共に、この性質を持つ超共形場理論において、理論の持つt'Hooftアノマリが一意に決まってしまうことを示しました。この結果の副産物として、私がかつて別の手法を用いて計算した例外型弦理論のアノマリを、より簡潔な方法で再現することが可能になりました。本結果は論文にまとめられ、雑誌Journal of High Energy Physicsで査読中です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要に示した通り、本年度は6次元超共形場理論について、ソリトン弦の中心電荷という新たな物理量の計算に成功しました。また、以前に行った例外型弦理論に対する計算を、新たな観点から大幅に簡単化することにも成功しました。これらは、私が6次元超共形場理論じたいに対する理解を着実に深めていることを示しています。さらに、私は現在、6次元超共形場理論のトーラスコンパクト化に関する以前の結果を拡張する研究をイタリア、アメリカのグループと共同で進めており、研究課題の「6次元超共形場理論の4次元へのコンパクト化」について新たな結果を次年度中に発表できると考えています。
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今後の研究の推進方策 |
現在推進中のイタリア、アメリカのグループとのトーラスコンパクト化に対する共同研究を完成させることを第一の目標としています。また、受入研究者の立川教授やGabi Zafrir氏らと共に、6次元超共形場理論の特定のクラス、つまり真空のモジュライ空間のHiggs枝がALE空間上のインスタントンモジュライ空間と同型になるような理論、に関するコンパクト化を調べています。こちらについても次年度中に論文にまとめて発表することが可能だと思われます。
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