本研究課題の目的は、各種の6次元超共形場理論を欠陥演算子つきのリーマン面にコンパクト化した時に現れる様々な4次元理論について、6次元理論の観点から統一的な理解を得ることにあった。網羅的な理解という点では、本年度の研究成果は十分なものとは言えないが、コンパクト化の個別の事例に関してはある程度興味深い進展が得られた。 私は以前、conformal matter theoriesと呼ばれる6次元超共形場理論たちについて、そのトーラスへのコンパクト化を考察し、得られる4次元N=2超対称理論を特定すると共に、4次元理論の持つ性質について6次元的な理解を得た。本年度は、ミラノ・ビコッカ大のNoppadol Mekareeya氏、Alessandro Tomasiello氏、プリンストン高等研究所の大森寛太郎氏と共に、この結果の (partially) frozen conformal matter theoriesと呼ばれる理論たちへの一般化に取り組んだ。得られた結果は雑誌Journal of High Energy Physicsに学術論文として掲載された。 また、本年度は、本研究課題のテーマと関係する内容で、物理の他分野にも影響を与える新結果を得ることができた。6次元超共形場理論の4次元へのコンパクト化を考察する上で、次元をまたいだ量子異常の間の関係は基本的な道具となる。そこで、このような量子異常の間の関係について、Kavli IPMUの米倉和也氏と共に、4次元の有限温度の量子色力学に適用した研究を行った。この研究は雑誌Physical Review Dに採録が決定している。 なお、本年度は私の学位取得年度に当たる。今までの6次元超共形場理論に関する研究成果を博士論文にまとめ、東京大学に提出し、審査の結果博士(理学)を授与された。
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