研究課題/領域番号 |
16J06569
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
青木 俊太朗 早稲田大学, 先進理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 超重力理論 / 高階微分作用 |
研究実績の概要 |
今年度は主にDirac-Born-Infeld(DBI)作用の超重力化に関する研究を行った。DBI作用はスカラー場、ベクトル場、二階テンソル場の高次微分相互作用(高次相互作用)を含んでいる。また、Dブレーンの有効作用を記述することも知られており、盛んに研究されている作用の一つである。平坦時空において、DBI作用の超場形式による構成法はすでに知られているが、部分的な構成に留まっている。具体的には、スカラー場を含むDBI作用と、ベクトル場、二階テンソル場を含むDBI作用は構成されているが、すべての場を含む完全なDBI作用は超場形式で与えられていない。そこで本研究では、これらの作用の超重力化を独立に行い、それぞれ論文として公表した。 まずスカラー場のみを含むDBI作用の超重力化を行った。今後さらなる拡張を目指すことを考えると、補助場を導入するoff-shell構成法が好ましく、中でも超共形テンソル算法による構成を選択した。これは以下の理由によるものである。超重力作用の構成には二つの構成法(old minimal構成法とnew minimal構成法)があることが知られている。これらの構成法は同等であることが示されているが、高階微分が存在する場合は非自明である。そこで高階微分作用の超重力化を試みる上では、どの構成法で構成可能かを議論することには意味がある。よって、上述の二つの構成法を統一的に扱うことができる超共形テンソル算法が適していると判断した。結果として、対象としたスカラー場を含むDBI作用はnew minimal構成法でのみ構成可能という、超重力高階微分作用に特有の結果を得た。 次にベクトル場と二階テンソル場を含むDBI作用の超重力化を行った。同様の手法で構成した結果、この作用はどちらの構成法でも構成可能であることを示した。さらに物質場との結合を具体的に書き下すことにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はoff-shell構成法によるDBI作用の超重力化について、その性質を明らかにし、物質場との結合を含む拡張を行うことができた。高階微分を含む作用をoff-shell構成法で超対称化(超重力化)する際は、自由度の観点等から、補助場が運動項を獲得しないことが求められる。上記で構成したDBI作用はこの性質を巧みに保持しており、今後のより一般的な超対称(超重力)高階微分作用の構成に指針を与えるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は対象とする高階微分作用として、アインシュタインテンソルとスカラー場の結合を含む作用に注目する。この高階微分作用は、超重力化の際、構成上要求される付加的な対称性と系の安定性が両立できないため、素粒子標準模型の含むべき湯川相互作用等を導入できないといった問題点がある。そこで、新たな場を導入することで上述の問題を解決し、より現実的な模型への拡張を目指していく。
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