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2016 年度 実績報告書

環状ホスファチジン酸を用いた多発性硬化症の新規治療薬開発

研究課題

研究課題/領域番号 16J06577
研究機関埼玉医科大学

研究代表者

山本 梓司  埼玉医科大学, 大学院医学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2018-03-31
キーワード多発性硬化症 / 脱髄 / 神経炎症
研究実績の概要

多発性硬化症(MS)は神経軸索を取り巻くミエリンが破壊される「脱髄」を特徴とした厚生労働省より特定疾患に認定されている原因不明の難治性疾患であり、再発と寛解を繰り返し病態が進行し(再発寛解型MS、自己免疫性脱髄)、進行性MS(非自己免疫性脱髄)に移行すると、車イス、ベッド生活を余儀なくされる。欧米では若年成人を侵す最も多い神経疾患であり、近年、我が国の患者数も急激な増加傾向がみられる。しかし、既存のMS治療薬は病態進行に対する効果が低く決定的な治療法は無い。MS病態の進行を顕著に抑制し、脳内ミエリンを保持させることがMS病態の根本的治療薬として臨床の場で求められている。我々は環状ホスファチジン酸(cPA)の脱髄抑制効果を既に報告し(Yamamoto S. 2014)、さらにcPAのより安定な誘導体である化学合成誘導体2ccPAは、自己免疫性脱髄(EAE)、非自己免疫性脱髄(CPZ)の両MSモデルにおいて顕著な脱髄改善効果を示した。さらに、脱髄発症後または寛解期から2ccPA投与でも脱髄の進行抑制、寛解の促進効果が得られている。つまり2ccPAは再発寛解型MS、進行型MSの全MS患者を対象とした根本的治療薬になる可能性がある。現在2ccPAをMS治療薬として応用するために、自己免疫性・非自己免疫性の脱髄抑制における詳細なメカニズム解析を実施、2ccPAの新規MS治療薬としての臨床応用を目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2ccPAsの脱髄抑制効果のメカニズム解明と2ccPAsを基軸としたMS治療戦略の開発を目的とし、さらには本研究を進展させ、2ccPAの新規MS治療薬としての臨床応用を目指す。
MS病態は臨床において炎症性と自己免疫性に分類され、それぞれ治療方法が異なる。多発性硬化症(MS)動物実験は、自己免疫性脱髄モデル(EAE)、非自己免疫性脱髄モデル(CPZ)の2大モデル動物を用いた。EAEは脳ミエリンに対する自己免疫性脱髄モデルとして最もよく用いられる。CPZモデルはオリゴデンドロサイト特異的細胞死による脱髄を誘導し再発寛解の病態を反映する非自己免疫性MSモデルである。我々は、2ccPAは、EAEとCPZの両MSモデルにおいて顕著な脱髄改善効果を示した。
2ccPAはCPZ誘導脱髄のグリア細胞の異常な活性化や神経炎症の要となるNLRP3インフラマソームを抑制し、さらにローターロッドを用いた運動機能試験で運動機能障害改善効果を示した。また、病態発症後、寛解期からの2ccPA投与でも脱髄抑制効果、寛解の促進効果が得られている。
2ccPAはEAEの自己免疫細胞(T細胞、マクロファージ)の活性化を抑制し、病態の進行を抑制した。また、臨床応用に向け第三者研究機関(日本チャールズリバー株式会社)に追試を委託し、2ccPAの脱髄モデルマウスにおける脱髄抑制効果の有効性・再現性を確認済みである。
EAEとCPZの両脱髄モデルの根底には神経炎症を共通のメカニズムに持つことが報告されている。そこで、2ccPAの脱髄モデルマウスにおける脱髄抑制、神経炎症抑制メカニズムを解明するために、ミエリンを豊富に含む脳梁組織のgenechip(遺伝子網羅)解析と脂質網羅解析を現在遂行中である。

今後の研究の推進方策

2ccPAの体内動態を調べるために、臨床応用にむけた薬物動態解析を行う。既に腹腔内に投与した2ccPAは脳血液関門を通過し脳内に到達していることをLC-ESI-MS/MSを用いた質量分析計による定量解析で明らかとしている。2ccPA投与後のマウス全身臓器における2ccPAの体内分布、滞留時間、消失半減期を調べるとともに、代謝物の同定を行う。また、2ccPAの薬物作用点を明らかとするために、2ccPAと相互作用する特異的な受容体、結合タンパク質の同定を行う。2ccPAに結合する標的タンパク質群を網羅的にアフィニティー精製し、特異的結合が見られたタンパク質についてLC-MS/MSを用いてアミノ酸配列を解析する。さらに、2ccPA特異的作用分子のノックアウトマウスを作製し、2ccPAのミエリン再生及び、MS病態改善メカニズムを解析する。本研究結果を国際学会で口頭発表し、一流ジャーナルに論文報告する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Excitotoxicity-induced prostaglandin D2 production induces sustained microglial activation and delayed neuronal death.2017

    • 著者名/発表者名
      Iwasa K, Yamamoto S, Yagishita S, Maruyama K, Yoshikawa K
    • 雑誌名

      The Journal of Lipid Research

      巻: 58 ページ: 649-655

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 多発性硬化症の新規治療薬候補・環状ホスファチジン酸誘導体2017

    • 著者名/発表者名
      K. Yoshikawa, S. Yamamoto, K. Yamashina, K. Iwasa, M. Gotoh, M. Suzuki, K. Maruyama, K. Murakami-Murofushi
    • 学会等名
      第90回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      長崎パブリックホール、長崎新聞文化ホール アストピア
    • 年月日
      2017-03-15 – 2017-03-17
  • [学会発表] 食事性肥満の世代間伝達が認知機能に及ぼす影響2017

    • 著者名/発表者名
      吉川圭介、江口寧々、岩佐健介、山本梓司、丸山敬、平澤明
    • 学会等名
      第26回神経行動薬理若手研究者の集い ~LOHASな神経行動薬理学研究~
    • 発表場所
      福岡大学病院 福大メディカルホール
    • 年月日
      2017-03-14
  • [学会発表] Cyclic phosphatidic acid derivative is a novel drug candidate for multiple sclerosis2016

    • 著者名/発表者名
      Keisuke Yoshikawa, Shinji Yamamoto, Mari Gotoh, Takabumi Shimizu, Miho Hashimoto, Kota Yamashina, Masahiko Suzuki, Kei Maruyama and Kimiko Murakami-Murofushi
    • 学会等名
      14th Meeting of the Asian-Pacific Society for NEUROCHEMISTRY
    • 発表場所
      HOTEL ISTANA, KUALA LUMPUR, MALAYSIA
    • 年月日
      2016-08-27 – 2016-08-30
  • [学会発表] 多発性硬化症の新規治療薬候補・環状ホスファチジン酸誘導体2016

    • 著者名/発表者名
      山本梓司、清水嘉文、後藤真里、橋本真歩、山科孝太、岩佐健介、丸山敬、室伏きみ子、吉川圭介
    • 学会等名
      第58回 日本脂質生化学会
    • 発表場所
      秋田県秋田市 にぎわい交流館AU
    • 年月日
      2016-06-09 – 2016-06-10

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公開日: 2018-01-16  

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