研究課題/領域番号 |
16J06655
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
伊賀瀬 雅也 山口大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | レオウイルス / 遺伝子組換え |
研究実績の概要 |
本研究内容の最も重要な課題は、イメージングに適したレポーター遺伝子をレオウイルス構成遺伝子に組み込み、人工的にウイルスを作製することである。平成28年度は、レオウイルスを作製するための材料収集および作製と、実際に本研究室にて遺伝子組換えレオウイルスを作製することが可能かを検討した。また、共同研究者である大阪大学の小林剛先生より分与されたnano-luc遺伝子を導入したレオウイルス(T1L株)を用いて、犬の腫瘍細胞に遺伝子組換えレオウイルスが感受性を示すかを検討した。 レオウイルスのウイルス構造をコードするプラスミド10種類とT7 RNA polymeraseを発現するパッケージング細胞(BHK/T7 pol.)を入手し、遺伝子組換えレオウイルスの作製を行った。10種類のレオウイルス構造プラスミドをBHK/T7 pol.にTransit-LT1を用いてトランスフェクションし、48時間後の細胞液より凍結融解法にてウイルス液を回収した。回収したウイルス液をL929細胞(レオウイルス高感受性細胞)に添加したところ、強いCPEが観察された。そのため、本研究室においても遺伝子組換えレオウイルス(野生型T3D株)を作製することが可能であった。小林先生との研究打ち合わせにて、大きいサイズの遺伝子をウイルス構造遺伝子に組み込むことが困難であることが判明し、現在は、可能な限り小さいサイズのレポーター遺伝子を探索している。 レオウイルスに導入可能なレポーター遺伝子の探索と並行し、小林先生が作製したnano-luc発現組換えレオウイルスについて、本研究に代用可能かを検討した。その結果、上記のウイルスが、犬組織球肉腫細胞株に強い細胞傷害を示し、発光量として定量化できた。そのため、in vivoのイメージングに代用することが可能であるが、治療用レオウイルス(T3D株)と血清型が異なることが懸念された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究員の研究への取組は誠実で実直であり、予定通りの成果を残している。レオウイルスのリバースジェネティクスの手法はすでに確立されてはいるものの、数々の課題がある方法であることが共同研究者の小林剛先生との打ち合わせなどから判明した。計画で用いるはずであったT3D株ベースのウイルスの組換えウイルスの作製には成功し、それらが実際に犬の腫瘍細胞に感染、増幅するところまでは確認できた。しかしそれらにイメージング用レポーターを導入するところまでは至っていないため、すでに小林先生が確立しているT1L株ベースの組換えウイルスを用いることでイメージングできることを確認するにとどまった。したがって、今後は、T3D株ベースのウイルスのイメージングレポーターを用いた組換えを早急に実施する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、当該研究年度で得られた成果に基づき、 (課題1)T3D株ベースのレオウイルス構造遺伝子に、レポーター遺伝子を組み込むことを早急に行う必要がある。問題点として、大きい遺伝子サイズのレポーターを組み込んだ場合に、10種のレオウイルス構造遺伝子をトランスフェクションしたBHK/T7pol.細胞からレオウイルスが作製される過程で、レポーター部分のみ抜けてしまう現象が起こることが判明している。そのため、可能な限り小さいサイズのレポーター遺伝子を網羅的に選択し、実際に構造遺伝子に組み込んだ後、ウイルス作製過程で抜け落ちないかを検討する。 また、当該年度でT1L型nano-luc導入レオウイルスが犬の腫瘍細胞においても応用可能であることが明らかとなったので、(課題2)犬組織球肉腫細胞移植マウスに投与し、in vivoで生体内イメージングが可能かを検討する。生体内イメージングでは、発光を検出するための限界の生体内深度が重要となるため、腫瘍の皮下移植モデルだけでなく、肺転移モデルにおいても発光を検出することが可能か検討していく。
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