研究課題
本研究では、獣医領域における腫瘍溶解性レオウイルス療法の臨床応用と、投与されたウイルスの生体内動態を把握することによる最適な治療プロトコールを確立することを目的とした。具体的には、レオウイルスの遺伝子組換えにより発光色素であるnano-lucを付加した組換えレオウイルス(T1L-nluc)を作製し、腫瘍細胞への感染を発光イメージングにより観察した。また、生体内に投与するために、ウイルスを大量精製した。そして、その精製したウイルスの品質を保証するために、再度細胞傷害、ウイルス増殖の検討を行なった。次に、免疫不全マウスに犬の組織球肉腫細胞株を移植し、腫瘤形成後にT1L-nlucを投与し、抗腫瘍効果と発光強度の確認を実施した。当初予定していたリアルタイムの生体イメージングに関しては、山口大学共同獣医学部共通利用機器のIVIS imaging機の故障と、設置されている施設の利用可能開始時期が大幅に遅れたため、本研究期間中に実施できなかった。しかし、試験終了時点で腫瘍組織を採取し、細胞溶解後、Nano-lucの発光強度を測定したところ、対照群のマウスと比較し、T1L-nluc投与群で、有意な発光強度の増強が確認された。本研究成果により、腫瘍形成マウスモデルを用いたT1L-nlucの生体イメージングの実験系の確立が達成された。最後に、ウイルス増殖を促進する作用をもつATMシグナル伝達阻害剤KU60019について、本薬剤が、マウスL929細胞株、犬の悪性黒色腫細胞株、人の腫瘍細胞株に対して、レオウイルスのウイルス増殖を促進し、細胞傷害効果を増強することを明らかにした。本成果により、KU60019は、レオウイルスの精製過程における利用だけでなく、腫瘍溶解性レオウイルス療法の併用療法となり得る可能性が示された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Vet Comp Oncol.
巻: 17 ページ: 184-193
10.1111/vco.12468.