研究課題
本研究では、植物の維管束幹細胞ではたらく因子に着目し、幹細胞における分化制御の仕組みを解明することを目指している。当該年度は、着目している遺伝子と非常によく似た遺伝子について、最新のゲノム編集技術を用いて変異体の作製に成功した。この変異体を用いた解析により、これまで知られていなかった維管束形成に関与する遺伝子であることが明らかとなった。この新たな因子の同定により、維管束幹細胞の分化の理解が進んだと言える。当初着目していた遺伝子については、その詳細な機能を明らかにすることを目指している。転写の制御に関係していることが想定されるため、その標的因子を探索するための形質転換植物を作製している。作製は進んでおり、解析の準備が整いつつある。また当研究室において確立された培養系により、維管束形成の分化過程をより詳細に調べることができるようになっている。この系を用いて、培養前と培養後の遺伝子発現を比較し、さらに他のグループによって報告された遺伝子発現データと組み合わせることにより、道管及び篩管で特異的に発現する遺伝子を網羅的に調べた。この遺伝子リストには機能未知のものも多くあり、特異的な発現を示すというデータは今後の維管束研究において有用な情報であると考えられる。実際、当研究室において新たな篩管形成因子の同定される過程において、このデータが寄与した。この内容についてはPlant Cell誌に共著論文として発表した。
3: やや遅れている
マイクロアレイ解析を行うために作出していた植物が、当初予定したように機能しないことが判明したため、計画の変更を余儀なくされたことがあげられる。新たな形質転換植物を作出しており、こちらは機能しそうであることが分かってきたため、計画の根本的な見直す必要は生じていない。形質転換植物の準備が進んでいるとはいえ、当初予定していた解析を行えなかった点でやや遅れていると考えている。また同様の理由により、相互作用因子の探索も解析を行うまでには至っておらず、この点でもやや遅れていると考えている。しかしこちらも新たな植物の作出により準備は整いつつあり、ある程度進展はあったともいえる。
前述の通り、新たな形質転換植物を作出しており、まずは前年度の計画に従い、下流因子の探索等を進めていく。相互作用因子の探索にはIP-MS解析を用いる予定である。その後の候補因子の解析等は、現在のところ問題点は見つかっていないため、当初の予定通り行う予定である。
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Methods in Molecular Biology
巻: 1544 ページ: 59-65
10.1007/978-1-4939-6722-3_5.
Plant Cell
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