物性物理学において、不純物問題は応用上重要であるのみならず、磁性不純物に関する近藤効果や、フォノンと電子の相互作用からなるポーラロン等、様々な重要概念を生み出してきた。本研究では、ボース気体中の不純物が成す「ボース・ポーラロン」の問題に取り組んだ。不純物とボース気体とがフェッシュバッハ共鳴を介して相互作用するボース・ポーラロンは、不純物の質量が無限大の極限では近藤効果の模型である一不純物アンダーソン模型のボソン版に、弱結合領域ではポーラロンの基本模型であるフレーリッヒ模型に帰着する。冷却原子気体を用いた実験により、これらの領域を含む広いパラメータ領域を実験的に実現可能であり、近年活発な研究対象となっている。 本研究では、ボース・ポーラロンの基底状態の解明に取り組んだ。基底状態ではボース気体がボース・アインシュタイン凝縮状態にあり、不純物がボゴリウボフ励起をまとってボース・ポーラロンを形成する。そこで、本研究ではボゴリウボフ励起を3つまで含む変分波動関数を用いて基底状態のエネルギーを計算した。 本研究では、ボース気体と不純物の相互作用は、フェッシュバッハ共鳴をモデル化した2チャンネル模型を用いた。さらに、ユニタリ極限における本研究の計算結果を1チャンネル模型による量子モンテカルロ計算の結果と比較した。その結果、エネルギーを三体パラメータの関数とみなして比較した時に2つの計算結果が誤差の範囲で整合することを見出した。これは、ユニタリ極限のボース・ポーラロンの性質が三体パラメータと密度によって普遍的に特徴づけられることを示唆する結果である。
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