研究実績の概要 |
「老いてゆくアジア」(大泉2007)の一つとして、現代台湾はプレ人口減少社会ともいうべき社会状況に直面している。90年代まで都市へ安価な労働力を供給していた農村部は、急速な人口流出と高齢化へみまわれるようになった。本研究はマクロな人口減少の趨勢の中で台湾農村が経験しているミクロなコミュニティ変容の様態を明らかにすることを目的とする。同目的のため、本研究では家族・祭祀・地域づくりの3局面における農村側からの社会的対応に着目した。 平成29年度は昨年度の調査成果の整理・公表に重点を置いた。調査成果の整理のため調査対象村(台南市後壁区D村)にて補足的な村落調査を実施した。補足調査では、昨年度の3回の調査で不明確であった屋敷地の相続プロセスについて確認を行うとともに、神明会による祭祀儀礼の参与観察を実施した。 補足調査をふまえ過去の調査内容を2篇の論文と2回の口頭発表にとりまとめた。分析テーマ2つめの祭祀(祭祀の村廟化)に関する英文論文1篇を『アジア地域文化研究』(Komaba journal of Asian studies, the University of Tokyo)第14号に投稿し、平成29年12月に掲載が決定した(印刷中)。分析テーマ1つめの家族(屋敷地の相続)に関しては別途の英文論文1篇を平成30年2月に『台湾人類学刊』(Taiwan Journal of Anthropology)に投稿し現在審査中である。また、同内容に関連する口頭報告を日本村落研究学会(平成29年11月、日本語)および台湾・国立台北藝術大学での学術交流会(平成29年12月、中国語)でそれぞれ実施した。
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