システム構築に必要な材料物性データとして,複合材成形中の材料物性挙動の温度と硬化度への依存性を調べた.埋込光ファイバ内部ひずみ計測に基づく物性値推定手法を用いて,成形中の物性値挙動を様々な成形温度下で取得した.また,それぞれの成形温度に対し,母材となるエポキシ樹脂の硬化度を示差走査熱量測定によって計測し,成形中の物性挙動を成形温度と硬化度に対して整理し,データベースを作製した.結果,同一硬化度では成形温度が小さいほど剛性は高く,同一温度では硬化度が小さいほど剛性が低いという傾向がみられた. 複合材料の成形について別視点のアプローチとして,L字部材のコーナー部の厚さ変形を計測するために,埋め込み光ファイバを利用した曲げセンサを新たに開発した.1 plyのプリプレグの表面の上下に,1本の細径(直径:52 マイクロメートル)の光ファイバを折り返して配置し,成形中の内部ひずみ分布を計測し,結果から厚さの変化を取得した.このように光ファイバの中心を中立軸から離すことでプリプレグの曲げ変形を光ファイバによって計測できることを示した.また,同様の手法を用いてプリプレグ積層時の内部ひずみが成形に及ぼす影響を調査した.現在多くのCFRP製品で利用されているテーププレイスメント成形技術では積層時に大きな内部ひずみが生ることが予想されるが,その計測手法は確立されていない.本手法と研究室レベルの自動積層装置を組み合わせることで、積層時の内部応力についてさらなる知見が得られると思われる。 積層時の残留ひずみやゲル化前の厚さ変化など,成形の初期段階における欠陥を正確にモニタリングしシミュレーションに加えることで、成形解析システムの計算精度を向上させる足がかりとなった。また、市販の成形解析シミュレーションソフトウェアであるCOMPROによる解析結果との比較も行っているが、結果は現状では未発表である。
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