がんの増殖において重要なキナーゼの阻害は分子標的薬開発の基本戦略である。一方でこのようなキナーゼ阻害剤を長期にわたって使用した場合、阻害剤と親和性を弱める変異の獲得によりキナーゼ阻害薬耐性を獲得することが問題となっている。キナーゼXに関しても阻害薬の長期処理によりこのような変異が生じることが報告されており、有効な対策の確立が望まれている。一方、発現そのものを低下させる機構は全く報告されておらず、本機構の解明は価値が高いと考えられる。昨年の研究では、具体的な方法としてはshRNAライブラリー手法によりPGGの抗がん作用を担う分子を網羅的に探索した。そこで、タンニン類の作用に必須な感知分子である Y 受容体を明らかにした。また、その Y 受容体をノックダウンさせた結腸がん細胞における PGG のキナーゼX阻害作用が抑制されることを見られた。このことから、Y 受容体と PGG の抗がん作用の関与することを明らかにした。さらに、DNA chip解析によりY 受容体をノックダウンさせた結腸がん細胞における PGG の遺伝子 mRNA発現を観察した。今年の本研究では、Y 受容体と PGG の抗がん作用に関連性があるZ 遺伝子のmRNA発現を検討した。PGGの添加によって変化を示し、siRNA 導入によってその変化が 50% 以上キャンセルされる Y 受容体依存的な遺伝子を見出した。その中から代表的遺伝子の発現再現性及びPGG濃度依存的に発現の変化をRT-PCR法用い検討した。このことから、今後の研究では他の加水分解型タンニン類も X 受容体と関連するか検討し、動物モデルにおける X 受容体依存的な遺伝子の発現を検討する。
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