研究課題/領域番号 |
16J06838
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原田 一貴 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | バソプレシン / グルカゴン様ペプチド-1 / 小腸内分泌L細胞 / ストレスホルモン |
研究実績の概要 |
小腸内分泌L細胞(以下、L細胞)は、消化管内の栄養素、腸内細菌代謝産物、血液中のホルモン、神経伝達物質などを感知し、グルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1: GLP-1)を分泌する。GLP-1は、膵β細胞からのインスリン分泌を促進するほか、摂食行動を抑制するため、L細胞のGLP-1分泌能を改善することで糖尿病などの代謝疾患治療に結びつくことが期待されている。 アルギニンバソプレシン(arginine vasopressin: AVP)は、腎臓からの水の再吸収に加えて、社会行動や血糖値制御にも関与するホルモンである。AVP受容体には、V1aR、V1bR、V2Rの3種類があり、特にV1aRとV1bRの遺伝子欠損マウスで血糖値や脂質代謝の異常が報告されている。申請者は、AVPがGLP-1分泌を制御し、血糖値調節に関与している可能性を提唱し、AVPおよびAVP受容体によるGLP-1分泌調節機構、およびその破綻が生体に及ぼす影響の解明を目的とした。 まず、3種のAVP受容体遺伝子欠損マウス(V1aR-/-、V1bR-/-、V1a・V1bR-/-マウス)のうちV1a・V1bR-/-マウスを用い、安静時の血中GLP-1濃度が野生型マウスよりも低いことを見出した。またV2RによるGLP-1分泌制御機構の解明のため、細胞内cAMP動態を可視化する新規蛍光タンパク質センサーの開発に成功した。今後はV2Rの関与を細胞イメージングで検討するほか、各種AVP受容体遺伝子欠損マウスにおいて、ストレス負荷や高グルコース負荷時の血中GLP-1濃度変化を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はAVP受容体遺伝子欠損マウスを用いた検証を行い、V1a・V1bR-/-マウスにおける安静時の血中GLP-1濃度が、野生型マウスよりも低いことを見出した。また、V2Rは活性化に伴い細胞内cAMP濃度を上昇させることから、細胞内cAMP動態を可視化する新規蛍光タンパク質センサーの開発に成功し、V2Rの関与を検討する準備を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、V2Rおよびその下流ではたらくcAMPがGLP-1分泌に与える影響を、マウスL細胞株GLUTag細胞を用いてライブセルイメージング解析する。さらにAVP受容体遺伝子欠損マウスにおいて、ストレス負荷や高グルコース負荷時の血中GLP-1濃度変化の解析を試みる。 なお、当初予定していた急性単離小腸でのGLP-1分泌量の測定、およびGLUTag細胞を疾患模倣条件で培養した際のAVP受容体の発現変動の解析は、細胞へのダメージが大きく安定したデータが得られない理由から、一時的に保留することにした。
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