太陽コロナでは磁気リコネクションにより太陽フレア爆発が引き起こされる。この過程は望遠鏡や分光器を用いてリモートセンシングにより観測され、米国のSDO衛星や日本のHinode衛星は紫外線域において鉄イオン等が放出する電磁波を観測する。これにより太陽コロナでの温度や速度などの物理パラメータを導出することができるが、この際に各イオンが電子温度に応じた電離平衡状態になっていることを仮定している。コロナの典型的なパラメータでは磁気リコネクションなどで加熱を受けてから電離平衡に達するまでに約100秒かかる。日本の次世代太陽観測衛星Solar-C_EUVSTでは秒以下の時間分解能で分光観測を行うことが計画されており、電離平衡に至る過程を観測することで新たな知見が得られることが期待されている。 本年度はこの式をMHD方程式系と同時に解くシミュレーションコードを作成した。このようなシミュレーションは太陽物理学において前例がなく、世界初である。このシミュレーションコードを用いた研究により我々は太陽フレアにおける磁気リコネクション観測においてプラズモイドがどのように観測されるかを明らかにした。また、分光観測からプラズマ温度を推定する際に一定サイズより小さなプラズモイドは電離平衡が仮定できないことを明らかにした。このシミュレーションコードを用いた研究はでSolar-C_EUVSTの科学検討や初期データの解釈に大きく貢献できる成果だと考えられる。
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