研究課題/領域番号 |
16J06887
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野津 翔太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 原始惑星系円盤 / 星・惑星形成 / スノーライン / C/O比 / 太陽系外惑星 / 高分散分光観測 / スーパーフレア |
研究実績の概要 |
本研究課題は、星表面の磁気活動も考慮に入れた原始惑星系円盤 (以下、“円盤”) と系外惑星大気の化学構造計算と、最新の観測結果による裏付けを元に、普遍的かつ現実的な惑星形成理論を構築する事を目的としている。
平成28年度は、(1)詳細な円盤物理構造モデルを基に化学反応ネットワーク計算を行い、円盤内の化学組成分布を得た。その結果に基づき円盤からの分子輝線の輻射輸送計算を行い、高分散分光観測によるスノーライン・炭素-酸素元素組成比(C/O比)分布の位置測定に有効な輝線の特徴・将来の観測可能性の検討を進めた。以上の研究の初期成果を自ら筆頭著者として2編の論文にまとめ、査読付国際学術誌に投稿、既に出版されている。(2)また自らALMAにH2Oスノーラインの同定を目指した観測の申請を行い、高い評価で採択されており、本年度は配信されたデータを元にした議論・解析を開始した。(3)そして惑星大気の元素組成は、大気獲得時の円盤ガスの元素組成を反映すると考えられる。一方円盤内ではスノーライン内外でガス中のC/O比が異なるので、円盤内と惑星大気のC/O比を比較すれば、惑星形成領域に制限が与えられる。 そこでまず中心星からの照射で決まる系外ガス惑星大気の放射平衡な物理構造を計算した後、その結果を用いて系外惑星大気の化学構造と惑星形成環境の関係を探るべく、中心星からの距離及び元素組成比などを様々に変えた場合について、化学平衡計算の手法を用いて系外ガス惑星大気の化学構造の計算・議論を開始した。(4)太陽型星の巨大黒点のサイズ分布やスーパーフレア発生との関連、スーパーフレア星の性質について、Kepler望遠鏡を用いた測光観測、APO3.5m望遠鏡・岡山188cm望遠鏡を用いた高分散分光観測などを通じ調査した。研究成果は共著論文2編にまとめられ、査読付国際学術誌に投稿、受理されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、まず(1)原始惑星系円盤の化学構造計算と、その結果を用いて分子輝線の放射輸送計算を行い、高分散分光観測によるスノーラインやC/O比などの同定に有効な輝線の特徴と、将来の観測可能性を調べ、初期成果を2本の査読論文にまとめた。また(2)ALMA観測についても、データ解析及び結果の議論を開始した。化学構造計算に関しては円盤物理・化学構造の進化を同時に扱う計算法の開発が予定より遅れているものの、分子輝線計算については赤外線-サブミリ波(ALMA, SPICA)での将来の観測可能性の議論が大きく進展するなど、予定以上の成果が見られた。 (3)惑星大気化学構造計算に関しては、定常的な系外ガス惑星大気の物理構造モデルの元で、化学平衡計算の手法を用いた惑星大気の化学構造計算コードの開発を進めることができたほか、(4)スーパーフレア星と巨大黒点の関連に関しても、Keplerデータを用いた統計的な研究などで一定の成果が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、原始惑星系円盤の化学構造計算・分子輝線の放射輸送計算の研究を推進し、高分散分光観測によるスノーラインやC/O比などの同定に有効な輝線の特徴と、将来の観測可能性の調査を更に進める。その一環として円盤物理・化学構造の進化を同時に扱う計算法の開発にも力を入れ、理論的観点からスノーラインやC/O比分布の時間進化過程について理解を深める。ALMA観測に関しても引き続き取得したデータの解析・議論・論文化を行うと同時に、新たな観測提案も行う。 惑星大気化学構造計算に関しても予定通り、化学平衡計算の手法を用いた計算による大気化学構造の調査を進めるとともに、円盤での研究成果を生かし、新たに化学反応計算の手法を用いた惑星大気化学構造計算コードの開発にも着手し、より現実的な惑星大気化学構造の理解につなげる。更に観測された系外惑星大気スペクトルとの比較を目指し、惑星大気分子吸収線の輻射輸送計算なども行う。
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