研究課題/領域番号 |
16J06889
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐藤 雅尚 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ポリマーブラシ / 螺旋構造 / 表面開始リビングアニオン重合 / 包接錯体 / フラーレン |
研究実績の概要 |
本研究は,片末端が基材表面に対して高密度に固定化された,らせん状ポリマーの構造および力学物性に関する詳細な知見を得ることを目的としており,これまでに表面開始リビングアニオン重合法に基づき新規らせん状ポリマーブラシの創製を成し遂げている.ポリマーブラシは,高密度に固定化された高分子鎖間の立体反発に起因して,全ての高分子鎖が基板に対して垂直方向に伸張・配向し,特異的な機能を発現する.そのため,グラフト鎖の分子量およびグラフト密度はらせん状ポリマーブラシの構造形成およびその配向に大きな影響をおよぼすと考えられる.本年度は,らせん状ポリマーブラシのモデル系として,表面開始リビングアニオン重合法により分子量,グラフト密度の異なるシンジオタクチックポリメタクリル酸メチル(st-PMMA)ブラシを調製し,フラーレンC60を包接した際のst-PMMAブラシの分子鎖凝集構造解析を微小角入射広角X線回折(GIWAXD)測定に基づき行った.GIWAXD測定によって得られた二次元の回折像を詳細に評価したところ,バルク状態では不規則に配列するらせん構造が基板表面に対して垂直に配列していることが明らかとなった.これは,ポリマーブラシの特異な分子鎖の配向性がらせん状ポリマーの構造形成に影響をおよぼしていることを示している.また,分子量,グラフト密度の異なるst-PMMAブラシに対して同様の実験を試みた結果,グラフト密度が0.47 chains/nm2以上,もしくは数平均分子量が40,000 g/mol以下のポリマーブラシに関してはらせん構造の形成が観測されず,ポリマーブラシのグラフト密度,分子量がグラフト鎖のらせん構造の形成に大きく影響することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はらせん構造を形成するポリマーブラシの調製およびその構造評価を目的とした.表面開始リビングアニオン重合法を用いることにより,分子量,分子量分布および立体規則性が制御されたらせん状ポリマーブラシの調製に成功し,GIWAXD測定に基づきその構造の詳細な評価が行えたため,研究はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,らせん状ポリマーブラシのらせんサイズの制御およびその力学特性の評価を行う.本研究で調製したポリマーブラシは,内部に導入する分子のサイズに依存して異なるサイズのらせん構造を形成することが期待される.そこで,らせん状ポリマーブラシに対して様々な分子を導入することによりらせん構造の制御を試みる.また,らせん構造がポリマーブラシの力学特性におよぼす影響を評価する予定である.
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