研究実績の概要 |
本年度は高波長分解能の紫外分光吸収スペクトル計測システムの立ち上げを行った。まず、ガスクロマトグラフを用いて試料(硫黄同位体濃縮SO2ガス、すなわち32SO2, 33SO2, 34SO2, 36SO2)を精製する手法を立ち上げ、実際に試料を精製した。次に、真空紫外分光の基礎実験を行い、波長分解能およびスキャン数の最適化を行った。波長分解能1cm-1の測定で約5%の精度で測定できることがわかった。1cm-1の波長分解能は、これまでに報告されている32SO2, 33SO2, 34SO2, 36SO2の吸収断面積では最高である。続いて、測定されたデータの解析を行った。従来の方法では吸収断面積の圧力依存性により誤差が生じてしまうため、これを補正することが可能なEndo et al. (2015)と同様の解析方法を用いた。また、高分解能の計測であるため、1回の測定で得られるデータ数が100万個と非常に多く、従来の表計算ソフトでは計算および解析が困難であった。したがって、Endo et al. (2015)とは別の表計算ソフトを用いた計算方法を確立した。最後に、4種硫黄同位体SO2に(32SO2, 33SO2, 34SO2, 36SO2)について、波長分解能1cm-1での測定を開始し、。4種の硫黄同位体のSO2ガス試料について、12通りの圧力で吸収測定を行った。32SO2の吸収断面積について、予察的な結果を質量分析学会同位体比部会にて報告した。 また、本研究と大きく関連する「光学的に薄い条件におけるSO2光解離実験における硫黄同位体分別」について、計算した吸収断面積から予想される結果を考察に加え、Goldschmidt国際会議およびEarth and Planetary Science Letters誌にて発表した。
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