研究課題/領域番号 |
16J06990
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
遠藤 美朗 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 硫黄同位体 / 非質量依存分別 / 二酸化硫黄 / 光化学 / 圧力幅 |
研究実績の概要 |
本年度はSO2光解離反応における硫黄同位体異常の全圧依存性を調べる実験を行った。真空ラインの改造および実験条件の最適化を行い、0.02気圧から1.7気圧までの全圧条件で光化学実験が行えるようになった。様々な全圧下でSO2光解離実験を行い、光解離生成物の硫黄同位体比を調べた。SO2分圧を固定した条件での実験および考察が進み、硫黄同位体異常(Δ33S、Δ36S値)が全圧に応じて大きく変化することが明らかになった。特にΔ33S値が大きく変化し、全圧が大きいほどΔ33S値が0に近づく傾向を示した。この傾向は、全圧が大きくなると吸収線幅が太くなり、32SO2の吸収が33SO2に影響を及ぼすことを考慮したモデルにより計算される同位体効果の傾向と一致した。また、同位体異常は全圧0.1気圧以上の条件で全圧に強く依存し、一方で、全圧0.1気圧以下の条件では全圧にほとんど依存しないことがわかった。本実験における吸収線幅は、全圧が大きい条件では圧力幅、全圧が小さい条件では吸収線幅はドップラー幅(全圧は無関係)であると考えられる。分光の先行研究から、SO2が圧力幅がドップラー幅と比べて大きくなるのは0.1~0.2気圧以上と見積もられる。以上のことから、本研究で得られた同位体異常の全圧依存性は、吸収線幅の圧力広がりに起因すると推察した。 さらに、1気圧以上のような高い全圧条件ではΔ36S/Δ33Sの傾きが急になり、Δ36S/Δ33S比がおよそ-7となることがわかった。Δ36S/Δ33S=-7は太古代の硫黄同位体異常の傾向(Δ36S/Δ33S ≒ -1)とは大きくずれる。本研究の実験結果と太古代の地質記録の硫黄同位体異常を比較することにより、大気全圧に関する示唆が得られると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
SO2光解離反応における硫黄同位体異常が1気圧程度においても全圧に依存することを明瞭に示すことができた。さらに、それが吸収線の圧力広がりに起因すると示唆された。したがって、硫黄同位体異常が光化学反応時の全圧を反映していることを示すことができた。これは非常に興味深くかつ応用できる結果であり、計画以上に進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
高波長分解能での分光実験を行い、同位体異常の全圧依存のメカニズムについてのさらなる解明を目指す。異なるSO2分圧下において、全圧が硫黄同位体異常に及ぼす効果を調べる。SO2光解離実験における硫黄同位体異常の結果(先行研究を含む)をすべて説明する硫黄同位体分別の関数化を目指す。
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