研究課題
四極子自由度が活性な非Kramers系に見られる多彩な電子状態の統一的理解を目指すべく、本年度はPrRh2Zn20に対する異なる磁場方向での電気抵抗率測定、圧力・磁場同時印加した状態でのPrRh2Zn20の電気抵抗率測定、PrTi2Al20における圧力下熱電係数測定を実施した。1、PrRh2Zn20の磁場中電子状態は電気抵抗率測定により4つの特徴的な状態(非Fermi液体状態・四極子秩序状態・重い電子状態・磁場誘起結晶場一重項状態)が存在することを見出し、この4つの状態の磁場方向に対する異方性を調べることで、それらの電子状態が非Kramers二重項の磁場による分裂幅により特徴づけられていることを突き止めた。これは、非Kramers系の電子状態を理解するうえでDoniach描像とは異なる枠組みが必要であることを示しており、申請者は新たな枠組みとしての概念的相図を提案した。2、ブリッジマン型圧力セルを用いてPrRh2Zn20に8GPaまでの静水圧をかけて電気抵抗率を測定したところ、圧力の増加に伴い電子状態の各特性温度が上昇することを確認した。この変化は圧力によってc-f混成強度が増強されたためと解釈することができ、圧力中でのPrRh2Zn20の電子状態がc-f混成強度という単一のパラメータによって整理できる可能性を示唆した。3、ブリッジマン型圧力セル内にAuFe-Au熱電対を2組導入することで試料の温度差を直接測定することなく圧力下で熱電係数を見積もれるシステムを構築した。これを用いてPrTi2Al20の圧力下熱電係数を測定したところ、四極子秩序相の臨界圧に近づくにつれて熱電係数の温度依存性が発散的に増大しており、四極子のゆらぎが発達してることが示唆される。その臨界圧近傍では超伝導が増強されることが知られているため、四極子ゆらぎと超伝導の関連性が期待される。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Journal of the Physical Society of Japan
巻: 86 ページ: 044711-1~10
http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.86.044711