研究課題/領域番号 |
16J07114
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐久間 守仁 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞損傷度計測 / 活性酸素 / 細胞間相互作用 / 貪食 |
研究実績の概要 |
がん細胞の損傷度と貪食細胞による貪食を評価するために,本年度は主にがん細胞の損傷度を評価する手法の開発を行なった.細胞は機能の維持のためベシクルやミトコンドリア等の細胞内小器官を輸送しており,このような運動の変化から細胞の損傷を評価することが可能であると考えた.そこで,細胞の損傷度を細胞内運動の変化から評価する光ゆらぎ法を開発した.本手法を用いて,赤色蛍光色素IR700による損傷前後の細胞内運動を評価したところ,損傷後の細胞内運動は低下することがわかった.さらに,細胞に与える損傷度を制御することによって,損傷が大きいとより細胞内運動が低下することを明らかとした.このような損傷による細胞内運動の低下は,脳がん細胞,乳がん細胞,子宮頸がん細胞,ヒト臍帯静脈内皮細胞,iPS 細胞などの複数の細胞種で観察された.そのため,細胞内運動の低下は細胞損傷の指標となる可能性が示された.このような細胞内運動の低下は,IR700を内包しているリソソームの損傷による細胞質中へのIR700の拡散と,拡散したIR700 による輸送分子キネシン,ダイニンや細胞内骨格である微小管への損傷によって引き起こされていることがわかった.光ゆらぎ法に関しては,2016年にScience and Technology of Advanced Materials誌に採択され,複数の細胞種での検討や細胞内運動低下のメカニズムに関する内容の論文投稿準備を行なっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光ゆらぎ法によって,細胞の損傷度を計測することに成功した. 来年度は,本手法を用いて,研究目的であるがん細胞の損傷度と貪食細胞による貪食を明らかとする研究を行う.
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今後の研究の推進方策 |
がん細胞の損傷度を計測しつつ,貪食細胞との相互作用の観察を行う.そして,貪食される損傷を受けたがん細胞の,CD47等貪食関連膜タンパク質の発現や動態の観察を行う.
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