研究課題/領域番号 |
16J07131
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大桃 理志 新潟大学, 自然科学系, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ポルフィリン / ジアザポルフィリン / 光線力学療法 / 吸収特性 / 機能性色素 |
研究実績の概要 |
優れた光捕集能と一重項酸素発生効率を有する「5,15-ジアザポルフィリン」を医療用色素材料へ応用することを目的とし、本年度は、(i)近赤外部に強い吸収を持つジアザポルフィリンの合成、(ii)得られた誘導体の一重項酸素発生効率の調査、(iii)水溶性誘導体の合成の三つの課題に取り組んだ。まず、課題(i)については、これまでの研究により、ジアザポルフィリンに電子供与基を導入することで大きな吸収帯の長波長化が起こることが分かっていたため、ジアザポルフィリンの外周部にアミノ基を複数導入することで近赤外部に強い吸収を持つ誘導体が得られると考え、アミノジアザポルフィリン誘導体の合成に取り組んだ。条件検討を重ねた結果、塩基存在下でジアザポルフィリンとアミンを混合するだけで、一段階でジアザポルフィリンの外周部にアミノ基を四つ導入できることを見出した。合成したテトラアミノ体の光学特性を調査したところ、期待通り、近赤外部に強い吸収を示すことが明らかとなった。そこで課題(ii)で一重項酸素発生効率を調査した。近赤外光照射条件において一重項酸素発生効率を測定したところ、テトラキス(ジフェニルアミノ)ジアザポルフィリンPd錯体が優れた量子収率で一重項酸素を発生させることを見出した。さらに、その色素を医療へ応用することを目指し、課題(iii)で分子に水溶性を付与する手法の確立に取り組んだ。アミノ基上の芳香環パラ位にエステル部位を有するテトラキス(ジアリールアミノ)ジアザポルフィリンを合成し、エステル部位をアルカリ加水分解によってカルボキシ基に変換することで、塩基性条件下で水に溶ける誘導体を合成することに成功した。これらの結果は、テトラアミノジアザポルフィリン誘導体が、新たな医療用色素材料を開発する上で有望な母核となることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジアザポルフィリンの新たな反応性を見出し、それを利用して合成したテトラアミノジアザポルフィリン誘導体が近赤外光照射下で優れた一重項酸素発生効率を示すことを見出した。細胞毒性の評価には至っていないが、一部の誘導体が医療用色素の母核として有望な性質を示したことから、ジアザポルフィリンの化学修飾により優れた性質を有する新たな医療用色素を開発するという当初の分子設計の妥当性が示された。以上の点から、研究計画全体としては、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、テトラアミノジアザポルフィリン誘導体を医療用色素材料へ応用する研究に取り組む。具体的には、まず、水溶性テトラアミノジアザポルフィリン誘導体の水中における光学特性および光増感による活性酸素発生能を調べる。優れた性質を示す化合物については、共同研究により細胞毒性の評価を行う。さらに、得られた結果を踏まえて中心金属や置換基の異なる誘導体を複数合成し、より優れた性質を持つ色素の開発を目指す。
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