研究課題/領域番号 |
16J07173
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
阿久津 美紀 学習院大学, 人文科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | アーカイブズ学 / 子ども学 / 記録管理 / レコードキーピング / 児童養護施設 / 児童自立支援施設 / オーストラリアの王立委員会調査 / 児童虐待調査報告書 |
研究実績の概要 |
本研究は、ケアリーヴァー(施設の出身者)が自身の子ども時代を知りたいと考え、自身の記録の開示を求めた際に、当事者たちのためにどのような記録管理であれば、記録へのアクセスを拡充できるのか、検証するものである。今年度は、以下の4点に重点を置き、研究を進めた。 1、先行事例となりうる記録管理と児童福祉施設ついての論文や報告書の分析を行った。日本国内においては、児童福祉施設における記録管理について参照する事例がほぼ皆無であるが、イギリスやオーストラリアなどでは、児童福祉施設やケアリーヴァーに関する記録の管理や記録へのアクセスに関する研究は現在盛んに研究されている。そのため、海外の報告書、論文を中心に、ケアリーヴァーが自らの記録へのアクセスする上で関係する個人情報保護法や支援体制を調査し、現状を把握した。 2、日本や海外の児童養護施設の卒業生への聞き取り調査から、当事者の記録へのアクセスについての考えを調査した。具体的には、「いつ、何を知りたいと思ったのか」、「施設にいた時に知りたいと思った際、職員に相談できたか」、「どういったことを記録で残してほしいのか」等を中心に聞き取り調査を行った。 3、海外や日本の児童福祉施設に関する記録管理について調査を行った。(調査先:国内の児童養護施設や児童自立支援施設、京都府立総合資料館、奈良県立図書情報館、オーストラリア国立公文書館、ヴィクトリア州の公文書館、Western Sydney University内のThe Female Orphan School等) 4、上記1、2、3の成果として、今年度は学会・研究会において6回報告し、2本の論文を寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成果の一部は、記録管理学会誌『レコードマネジメント』に投稿し、掲載されている。(2016年12月、2017年3月)さらに、これまで調査から得られた成果については、ライフストーリーワーク研究会や早稲田大学里親研究会等で報告し、児童相談所のソーシャルワーカーや児童福祉施設の職員等と議論を深めた。また、これらの研究成果については、2017年4月のアーカイブズ学会、6月の記録管理学会にて報告を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本研究課題の最終年度である。そのため、これまでの研究成果のまとめに入りたい。 また、2013年から行われているオーストラリアの王立委員会の性的虐待調査の中では、記録やレコードキーピングの課題が取り上げられている。そのため、この調査については、動向を注視していくとともに、関係者からの聞き取り調査もさらに行っていきたい。 国内では、児童養護施設の長期的な記録管理の在り方とケアリーヴァーへの記録提供のために、児童福祉施設における記録管理体制の整備を進めていく。上記の調査の成果については、今年度内に学会誌や大学紀要への投稿を行う。
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