研究課題
本年度は新奇性追求に関わる遺伝子を特定するQTL解析を遂行するために,(1)新奇性追求の強さを定量する実験系の確立,(2)次世代シークエンサーを用いたRAD-seqの立ち上げ,(3)実験系統の飼育・繁殖の基盤確立と交雑個体の作成,の3つの目的を立て取り組んだ.【(1)新奇性追求の強さを定量する実験系の確立】実験室内環境において新奇性追求の程度を定量するために,長さ1660mm x 幅360mm x 高さ150mmの小型実験水路を作成した.様々な行動実験に応用可能にするため,自由に移動できる壁や床も作成した.作成した小型実験水路を用いて,これまでに観察されているメダカ地域集団間の好奇心の強さの違いが顕著に現れる実験条件の検討を行った.さらにその行動の定量を可能とする指標を見出した.この値を用いてメダカ地域集団間で比較することで,好奇心の強さを顕著な違いとして検出できることが明らかになった.【(2)次世代シークエンサーを用いたRAD-seqの立ち上げ】QTL解析による遺伝子座特定のため,ハイスループットかつ高密度の遺伝マーカ取得できる,RAD-seqの立ち上げを行った.AmoresらのRAD-seqプロトコル(Amores et al., 2011)をベースに,RAD-seqの実験系を新たに考案し立ち上げた.【(3)実験系統の飼育・繁殖の環境整備と交雑個体の作成】実験に用いるメダカ地域集団を導入するために,受入研究室がある岡山大学に飼育環境の整備を進めた.加えて,より多くの個体を飼育可能にするために,50Lコンテナを用いたメダカ飼育場を整備した.現在,QTL解析に向けたメダカ地域集団の交雑個体群の作成に取り組んでいる.
2: おおむね順調に進展している
前所属先から岡山大に移したメダカが死ぬなど,当初は環境の違いによりうまく飼育できない状況が続いたが,メダカの飼育環境を調整したことで,順調に飼育できる状態にすることができた.新奇性追求行動の定量化やQTL解析用の個体群作成も進んでおり,概ね順調に進んでいる.
F2個体を用いたQTL解析とトランスクリプトーム解析,ターゲットリシークエンスを進める.
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PloS one
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