研究実績の概要 |
受入研究室では、ジイソニトリルを金属触媒によりリビング重合して得られるポリ(キノキサリン-2,3,-ジイル)について研究を行っている。特にキラルな側鎖を持ち、かつキノキサリン環の5位にホスフィン部位を導入したポリキノキサリン配位子PQXphos が Pd や Ni 触媒を用いた不斉反応に有効な不斉配位子であることを既に発見している。しかしながら、これまでのポリキノキサリンはランダム共重合により合成しているため単一のモノマーユニットのみが触媒サイトとして働いており、複数のモノマーユニットが共同的に作用する触媒系の開発は達成されていなかった。 この課題のために、モノマー配列を制御したポリキノキサリンの合成に取り組むこととした。一般的な連鎖重合では伸長反応は同一の反応の連続であり。モノマーの伸長を一つで制御することは非常に困難である。本研究では、先にコアとなるオリゴキノキサリンを精密合成し、これを起点に重合を行うことで形式的に配列制御したポリキノキサリンの合成を検討した。 本年度はモデルとして5,8-ジ(トリル)キノキサリン部位をもつポリキノキサリンの合成を検討した。このキノキサリン3量体を配位子として持つ二核パラジウム錯体を合成した。この錯体を開始剤に用いて(S)-2-ブトキシメチル基を有するモノマーを重合させることで、中央に3個の5,8-ジ(トリル)キノキサリンが連続した構造を持つポリキノキサリンが得られた。これは従来の重合法では合成できない特異な構造であり、新たな機能を有していることが期待できる。
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