研究実績の概要 |
所属研究室では、らせん高分子ポリ(キノキサリン-2,3,-ジイル)について研究を行っており、キラル側鎖を持つポリキノキサリンが、溶媒によって主鎖のらせんの右巻き・左巻きを完全に切り替え可能であることを見出している。これを利用したキラリティスイッチング可能な高分子不斉配位子や、円偏光蛍光材料の開発に成功している。ポリキノキサリンのモノマー配列を精密に制御することで、新たな機能性ポリキノキサリンの開発が可能になると考えられる。そこで新規不斉配位子および蛍光材料開発を志向し、モノマー配列を制御したポリキノキサリンの合成に前年度から引き続き取り組むこととした。 前年度開発した方法に従いABA型配列を持つテルキノキサリン-パラジウム錯体Iを合成した 。中央のBユニットとして様々なアリール基やキラル側鎖を持つキノキサリンを導入可能であった。この錯体Iを開始剤に用いて(S)-2-ブトキシメチル基を有するモノマーを重合させることで、様々な重合度を持つポリキノキサリンP1を得た。円二色性スペクトルの結果から、P1がクロロホルム中では左巻き、1,1,2-トリクロロエタン中では右巻き構造をとり、60量体以上で完全な一方向巻きらせんを有することが明らかとなった。 続いてBユニットにジアリールキノキサリンを持つ重合度60のP1について蛍光測定を行った。P1は導入するアリール基によって青色から黄色発光を示し、良好な量子収率も示した。円偏光蛍光測定を行ったところ、これら一連のP1はクロロホルム中て負の、1,1,2-トリクロロエタン中で正の円偏光蛍光を示した。P1の円偏光蛍光の非対称性因子glum値の絶対値は、以前に研究室で開発した円偏光蛍光を示すランダムポリマーP2の値より大きく、円偏光蛍光特性が向上していることが明らかとなった。
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