研究課題/領域番号 |
16J07311
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
坂中 哲人 大阪大学, 歯学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 歯周病原性プラーク / 栄養共生 / 口腔常在菌 / オルニチン / ポリアミン |
研究実績の概要 |
多様な微生物の集団である歯垢(プラーク)の歯周病原性が亢進する要因の一つとして,微生物間での代謝物を介した相互作用,すなわち栄養共生があるが,最近,口腔常在菌Streptococcus gordonii(Sg)の放出するオルニチンが歯周病関連菌Fusobacterium nucleatum(Fn)のバイオフィルム形成量を増加させることを報告した。本年度,私は二つのテーマについて研究を行った。一つ目はSgとFnの代謝物を介した細菌間相互作用に関する研究である。二菌種間の栄養共生機構についてさらに詳細に解析するために,トランスウェルを用いてSgと6時間共培養させたFnの菌体内および上清中の代謝物プロファイルを,Fn単独培養時と比較した。その結果,Sg共培養時のFn菌体内では,複数のアミノ酸濃度が有意に増加しており,さらに上清中の酪酸濃度が顕著に増加していることが示された。酪酸産生と歯周病原性プラークの高病原化との関連を示す報告が多くあることから,今回得られた結果は二菌種間の栄養共生によりプラークの病原性が亢進することを示唆している。 二つ目のテーマとして,歯周病原性プラークから唾液中へと放出される細菌由来代謝物に関する研究を行った。全身的に健康な被験者の唾液を,歯肉縁上プラーク除去前後で2度採取し,これらの代謝物プロファイルの違いから細菌由来代謝物を絞り込むとともに,これらの物質と歯周病重篤度との関連性を多変量解析の手法を用いて調査した。その結果,歯周病重篤度の高い被験者の歯肉縁上プラーク中ではポリアミン代謝経路が活性化し,オルニチンやポリアミンが高い割合でプラークから唾液中へと放出されている可能性が示された。この知見に関し,2016年6月にSeoulで行われた第94回国際歯科研究学会で口頭発表を行うとともに,2017年2月付けでScientific Reportsに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔常在菌由来の代謝物を介した栄養共生機構についての知見を積み重ね,2菌種間の栄養共生が歯周病原性を亢進させる可能性を示した。また学会発表,論文発表による研究成果の公表も活発に行い,本年度は第一著者として原著論文と総説論文をそれぞれ一報ずつ発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は唾液を用いた臨床研究で得られた知見を踏まえつつ,代謝物を介した口腔細菌間相互作用とそれが歯周病原性バイオフィルムの高病原化に及ぼす影響について,さらに解析を進めていくとともに,論文として研究を完結させる方向で研究を進展させていくこととなる。
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