歩行における筋や関節の協調に着目してこれまで研究を進めてきた。筋および関節間の協調は筋シナジーと運動学シナジーを調べることにより定量的解析が可能である。本研究は歩行中の筋シナジーおよび運動学シナジーにおける活動パターンの特性を明らかにすることを目的としている。具体的には、以下の2点について本年度は明らかにした。 ① 歩行速度の変化にともなう筋シナジーの活動度における安定性 筋シナジーの活動度における最大リアプノフ指数と最大フロケ乗数を算出することにより、筋シナジーの活動度における安定性を定量した。実験では様々な歩行速度で歩行中の表面筋電図(下肢12筋)を計測した。表面筋電図から非負値行列因子分解によって筋シナジーを抽出し、筋シナジーの活動度における最大リアプノフ指数と最大フロケ乗数を算出した。解析の結果、筋シナジーの活動度における発散性は歩行速度の上昇に伴い増加するが、周期性は安定的に保たれることが明らかとなった。この研究成果に関して、国際会議において口頭発表を行い、国際誌に採択された。 ② 非最適な歩行における運動学シナジーの時間協調における安定性 様々なストライド長とストライド時間の組み合わせで歩行している際の運動学シナジーを抽出し、運動学シナジーの時間協調における最大リアプノフ指数を算出した。被験者は3種類の歩行速度を5種類のストライド長で歩行した。歩行中のセグメントの仰角データに特異値分解を施し、運動学シナジーを抽出した。解析の結果、時間協調の発散性は、著しい小股と高速度帯において高いことが明らかとなった。この成果は国際会議にて発表され、Student travel awardを受賞した。さらに、国際誌に研究成果が採録された。
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