本年度は主に以下の2つの研究を行った。 (1)前年度に提案した反転対称性の破れた三角格子フォトニック結晶の研究を引き続き行った。バルクの性質を実験的に調べるために化合物半導体で三角形の穴を持つ三角格子フォトニック結晶を作製した。また2つの異なるフォトニック結晶界面に生じるエッジモードの観測のためシリコンで三角形の穴を持つ三角格子フォトニック結晶を作製した。今後はこの試料の測定を行うことで後方散乱の抑制について実験的に検証する予定である。 (2)反転対称性の破れた2次元フォトニック結晶スラブのライトラインの上の放射モードの偏光ベクトルについての研究を行った。反転対称性のあるフォトニック結晶では放射モードの偏光ベクトルはほぼ直線偏光になるのに対し、反転対称性の破れたフォトニック結晶では円偏光が現れることを明らかにした。さらに円偏光となる波数の周りで、偏光楕円が波数空間上で半周するというトポロジカルな性質を示すことを明らかにした。このために円偏光は波数空間上に安定に存在できる。この半整数トポロジカル数は円偏光は楕円の長軸方向が定義できない一種の位相特異点であるために生じる。さらにこの円偏光はトポロジカルチャージ保存則を通じて、BICが2つの円偏光に分裂することで生じることを示した。今後はシリコンで三角形の穴を持つ三角格子などの反転対称性の破れたフォトニック結晶を作製し、今年度の理論的な提案を実験的に検証していく予定である。
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