研究課題/領域番号 |
16J07375
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石垣 智恒 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
キーワード | 輝度変動係数 / コラーゲン線維配向 / 血液循環 / アキレス腱 |
研究実績の概要 |
予備実験において、腱超音波横断画像における輝度変動係数を計測することで、腱コラーゲン線維配向を定量出来る可能が生じた。そのため、当初の研究計画とは異なるが、「ヒト生体における腱コラーゲン線維配向の定量方法の確立」という研究を優先した。 腱が超音波異方性という特徴を有することから、腱コラーゲン線維配向の乱れによって信号強度にもバラツキが生じると考えられる。そこで我々は、足関節他動背屈および底屈筋等尺性収縮中の腱の伸長に伴う腱コラーゲン線維の再配向を、輝度変動係数の計測によって推定できるかを検証した。足関節他動背屈運動課題では、底屈20°~背屈20°まで10°ごと、底屈筋等尺性収縮運動課題では、最大随意収縮(MVC)の0~70%まで10%MVCごとの画像を撮影した。撮影された腱横断画像から輝度変動係数を計測した。その結果、腱がより伸張される他動背屈運動の背屈域、および等尺性収縮の低張力域において輝度変動係数は顕著に減少した。このことから、腱の超音波横断画像における輝度変動係数の計測が腱コラーゲン線維配向を推定できる可能性が示唆された。 次いで、既存の血液循環の計測に加え、輝度変動係数による腱コラーゲン線維配向の定量法を用いて、異なる負荷(低負荷と高負荷)での遠心性収縮運動の急性効果を検証した。その結果、遠心性収縮運動は腱の血液循環を増加させ、コラーゲン線維を再配向させた。しかしながら、負荷の違いは結果に影響しなかった。それゆえ、腱炎患者が実施する際の安全面を考慮すると、低負荷での遠心性収縮運動の実施を推奨する。 アキレス腱炎患者を被験者として集めることが困難であったため、腱炎罹患率の増加する高齢者と若年者との間で、腱の血液循環、力学的特性およびコラーゲン線維配向の比較を行った。現在データを取得済みであり、解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、「ヒト生体における腱コラーゲン線維配向の定量方法の確立」という研究を優先した。その結果、腱の超音波横断画像において輝度変動係数を計測することで、腱コラーゲン線維配向を定量できる可能性が示された。 さらに、負荷の異なる遠心性収縮運動の急性効果を検証した結果、遠心性収縮運動は腱の血液循環を増加させ、コラーゲン線維を再配向させた。しかしながら、負荷の違いは結果に影響しなかった。それゆえ、腱炎患者が実施する際の安全面を考慮すると、低負荷での遠心性収縮運動の実施を推奨される可能性を示した。 当初はアキレス腱炎患者を被験者とする予定であったが困難であったため、腱炎罹患率の増加する高齢者と若年者との間での腱特性を比較した。本研究は鋭意解析中である。 当初予定していた肩腱板の血液循環の測定に関しては、繰越金にて測定用のプローブを購入した。しかしながら、採用期間中に実験に十分な時間を割くことができなかった。今後も継続して肩腱板の血液循環の計測を実施する。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画にはなかったが、腱コラーゲン線維配向の定量法を確立したことから、この応用研究を優先的に実施する。具体的には、腱炎の有効な治療法とされる遠心性収縮運動が腱コラーゲン線維配向に与える影響を検討する。 また、購入した肩腱板用の血液循環計測用プローブを用いて、肩腱板の血液循環の計測法の確立を試みる。計測方法の確立後、応用研究を随時実施する。
|