研究実績の概要 |
本研究の目的は、[A]惑星形成前の原始惑星の集積&破壊過程と、[B]惑星(特に、火星)の表層水散逸を明らかにすることである。[A][B]を合わせ、地球型惑星の環境変動と、水などの揮発性物質との関わりを包括的に議論する。平成29年度までに得られた主な研究成果は以下のとおりである。 [A]原始惑星の衝突進化史:小惑星ベスタなどを起源天体とする分化隕石は、地球形成前の、原始惑星が経験した天体衝突史、熱進化史を記録する。報告者は、二次イオン質量分析計(NanoSIMS)による局所分析法を開発、応用し、原始惑星由来の隕石の記録年代を調べた。これまでに、2つの隕石グループ(ユークライト、メソシデライト)を対象に、隕石中の特定鉱物の年代を明らかにし、原始惑星の天体衝突タイミングに制約を与えることに成功した。本成果の一部は既に国際学術誌に論文が掲載されている(Koike et al., 2017 GRL)他、報告者が筆頭論文を国際学術誌に投稿予定であり、数ヶ月以内の掲載が期待される。さらに、本成果を博士論文として纏めた結果、所属大学院・研究科から高く評価され、博士(理学)の認定と、研究奨励賞を授与された。 [B]火星の表層水散逸史:火星は、太古には液体表層水(海洋)が存在したとされ、かつての湿潤環境から乾燥寒冷環境へ大規模な環境変動を経験した惑星である。火星から水が失われる過程は、含水鉱物(アパタイト等)の水素同位体比として記録される。報告者は、NanoSIMSによる局所分析法を用いて、火星隕石中のアパタイトが記録する水素同位体比と年代を調べ、火星の表層水散逸に制約を与えた(Koike et al., 2014, 2016 GJ)。更に、火星隕石が保持する火星大気組成を、バルクの加熱・破砕分析にて調べた。本成果は報告者が主著論文を国際学術誌に報告予定であり、数ヶ月以内の掲載が期待される。
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