研究課題
根毛は植物の根の表面にある毛のような器官で、根の表面積を大きくすることで水や栄養素の効率的な吸収に寄与している。根毛の長さは植物の生育する環境に応答して変わることから、植物は自身の置かれた環境に対して適切な長さを調節していると考えられているが、その分子機構は未解明な点が多い。本研究では、その根毛の柔軟な成長制御機構を転写制御という観点から明らかにするために、転写因子による根毛の成長制御機構の解明を行っている。これまでに本研究では、根毛の成長促進因子であるRSL4がGTL1およびDF1という転写因子によって発現抑制を受けることを明らかにした。さらに、トランスクリプトーム解析をはじめとする分子生物学的アプローチと数学的モデリングから、RSL4もまたGTL1の遺伝子発現を制御すること、RSL4とGTL1は共通するターゲットを持ち、RSL4は促進因子、GTL1は抑制因子として機能することなどを明らかとした。今後の解析では、本研究プロジェクトの初年度に実施した酵母ワンハイブリッドスクリーニングから示唆されている遺伝子の制御関係の検証を行っていく。例えば、リン酸欠乏や窒素欠乏に応答する転写因子など、外部環境に対して応答性を示す転写因子が、根毛の成長制御を担う転写因子を直接制御するという制御関係が示唆されている。これらの制御関係はまさしく本研究が解明を目指している「根毛細胞の可塑的な伸長成長を支える転写制御」そのものであり、本プロジェクトの目指すゴールは目前である。
2: おおむね順調に進展している
当該年度では、酵母ワンハイブリッドスクリーニングの解析も順調に進み、その検証のための準備に用いる遺伝子破壊株や過剰発現株、発現誘導株などの作出が着々と進行している。最終年度となる3年目に研究を総括するための準備は整っており、申請した研究計画通りに進行している。また、本研究プロジェクトに関連した論文がすでに2報受理されされており、プロジェクトは順調に進行している。
本年度は、昨年度に作出した形質転換体を用いて、スクリーニングから見出された転写因子の分子メカニズムの解明に取り組む。具体的には、クロマチン免疫沈降解析や培養細胞を用いたプロモーター解析により、初年度のスクリーニングから得られた転写制御関係の検証を進めていく。さらに、作出した機能欠損変異株や過剰発現株、発現誘導株を用いて、環境に対する応答を組織レベル、遺伝子発現レベルで調べ、「根毛細胞の可塑的な伸長成長を支える転写制御ネットワーク」の総括を行う。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
Plant and Cell Physiology
巻: 59 ページ: 770~782
10.1093/pcp/pcy013
Development
巻: 145 ページ: 159707~159707
10.1242/dev.159707
http://cellfunction.riken.jp/index.html
http://www.riken.jp/pr/press/2018/20180214_2/
http://www.riken.jp/pr/press/2018/20180215_1/