研究課題
最終年度は、長時間の電離放射線(X線)被ばく後の放射線感受性について細胞実験とモデル解析を用いた複合的手法で調査し、低線量被ばく時の細胞応答の数理モデル構築にも着手した。これら成果の一部は、国内・国際会議で発表するとともに、自然科学および臨床研究のあらゆる領域を対象にした学術誌にて主に報告した。長時間X線照射中の放射線感受性の調査については、3.0 Gy/hと6.0 Gy/hと同等の2種類の多分割照射法を追加使用し、長時間照射中の細胞周期の変化を調べた。核内DNA量の結果から、6.0 Gy/h照射時には照射開始後10時間まで細胞周期に有意な変化は認められない一方、3.0 Gy/h照射時には、照射中にS期の細胞割合が優位に増加するとともに放射線抵抗性が誘導されることがわかった。これはS期細胞の割合の増加による照射間DNA修復能率の増加により説明し得ることが数理モデルの解析によって示された。このモデル解析の妥当性は、上記の連続的照射条件だけでなく、急性照射条件下でも確認し、S期細胞割合依存の放射線抵抗性誘導について議論するに至った。低線量被ばく時の細胞応答の数理モデルの開発については、照射細胞と非照射細胞間のシグナル効果を前年度開発したモデルに組み込んだ。構築したモデルは、照射細胞から放出されるシグナル濃度、シグナル誘発DNA損傷数、細胞生存率(培地経由型バイスタンダー効果も含む)の文献データを再現することに成功した。この数理モデルを使用することにより、シグナル誘発DNA損傷の修復能率の違いがもたらす低線量放射線高感受性現象への影響を評価することができることを提示した。本年度の研究成果により、逆線量率効果(放射線感受性の逆転現象)ならびに低線量被ばく下の細胞応答(DNA修復能と生存率の関係)について、部分的ではあるがメカニズムの解明ができたと考えている。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Radiation Research
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Scientific Reports
巻: 8 ページ: -
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