研究課題/領域番号 |
16J07503
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡本 和樹 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 海馬 / 神経細胞 / シナプス / 電気生理学 / パッチクランプ記録 |
研究実績の概要 |
申請研究では、海馬亜領域であるCA3野神経回路の切断を伴わない生体外標本を用いて、CA3神経細胞の正確なシナプス結合性を測定する。そうした結合性のもと、CA3がもっとも効率化された記憶容量と処理能力を有しているかを検証する。その手段として、単一細胞の活動を記録・制御するパッチクランプ法を複数の神経細胞から同時に行う。また、記録した細胞ペアに可塑性誘導を施すことで、もともと結合していない細胞ペアにも新たに結合が生まれる土台(サイレントシナプス)が存在するかどうか、あるいはその存在確率を調べる。再帰性シナプス結合の評価のためには数百~数千もの細胞ペアのデータ収集が必要であるが、これまで設備の関係上、2つの細胞からの同時記録が限界であり、データ収集効率の点が課題であった。本年度においては、4つの細胞から記録できる装置を立ち上げ、以前より6倍の効率で細胞ペアの記録が可能となった。また細胞ペアのみの評価だけでなく、細胞集団の結合クラスター関係性も評価できるようになった。申請者はすでにこの装置を用いて、海馬スライス標本において未知の領域である海馬CA2野から300ペアの記録に成功し、CA2シナプス結合性を測定した。しかし、4細胞からの同時記録はそれ自体が高い技量を必要とするため、スライス標本と比べて扱いの難しいCA3ブロック標本から安定して記録できるまでには至っていない。今後はこの技術向上を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パッチクランプ記録装置の改良により、4細胞からの同時記録を実現した。これにより、申請研究で目的としていた2細胞ペア間でのシナプス結合解析のみならず、細胞集団の内部でのシナプス結合様式を記録可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
従来知られている海馬CA3野のシナプス結合ネットワークの裏に、形としては存在するがそのままでは活動していないサイレントシナプスが多く存在していると考えている。可塑性誘導によってサイレントシナプスを活性化し、その存在確率を測定する。これにより、海馬CA3神経回路がどれほど変化に対し柔軟性を有しているのかを明らかにする。
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