研究実績の概要 |
体細胞(卵丘細胞)クローンおよび受精由来の胎仔・胎盤を経時的に採取し(E(Embryonic day)13.5~19.5)、観察を行った。得られた胎盤重量を計測したところ、E13.5のクローン胎盤と受精由来胎盤では重量差が認められないものの、E15.5では約2倍の重量差が認められた。一方で、E13.5、E17.5およびE19.5ではクローンと受精由来胎仔重量に差が見られないのに対し、E15.5ではクローン胎仔重量減少を示したことから、クローンでは一過的な発生遅延が示唆された。クローン胎盤過形成はE13.5~15.5の間で顕在化するとともに、E15.5で一過的な胎仔発生遅延が観察されることから、E13.5~15.5の時期を詳細に調べることが重要であることが示唆された。 体細胞のみならずES細胞核移殖クローンでも胎盤過形成が起こることが知られている。マウスES細胞の樹立および多能性維持に、Mek1/2阻害剤(PD0325901)とGsk3β阻害剤(CHIR99021)の添加が従来法(血清+LIF添加)よりも効果的であることが知られている (conditional 2 inhibitor: c2i)。さらに、この方法を改変した、alternative 2 inhibitorが開発された(Yagi et al., Nature, 2017)。a2iで樹立した雌型ES細胞をドナーとした核移殖を実施し、E19.5で胎盤を採取した。採取した胎盤の組織切片を作成し観察したところ、体細胞クローン胎盤と比較してa2i ESクローン胎盤重量が小さくなる傾向が観察された。胎盤組織切片観察により、体細胞クローン胎盤では既報の通りspongiotrophoblast layerの拡大やlabyrinth layerの異常構造が観察されるが、a2i 雌型ES細胞由来クローン胎盤ではそれらが是正されている可能性が示唆された。
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