本研究の目的は、樹状突起における情報の演算機構に着目し、記憶の固定に関わるシナプス入力の時空間パターンを明らかにすることである。 これを実現するためには、記憶固定時のシナプス入力を大規模に可視化する必要がある。そこで、はじめに大規模スパインイメージングの改良に取り組み、従来に比べ広視野・高速撮影を実現した。さらに、スパインイメージングと脳波の記録を組み合わせることで、記憶固定時のシナプス入力を特定する技術を確立した。本手法を用いて、記憶固定時にシナプス入力の頻度が上昇することを確認している。現在、シナプス入力の空間パターンの解析を進めている。 また、大規模スパインイメージングで得られたデータは時にシグナルノイズ比が低いことが問題となる。この問題を解決するため、ノイズを削減する新規のフィルタを開発した。このフィルタはロジスティック関数を利用したものであり、短時間でノイズを減少させることができることから、オンラインフィルタとしても使用できる。さらに、カルシウムイメージングのデータだけでなく、電気生理学的手法によって得られたデータや画像データにも応用でき汎用性は高い。本手法はPlos One誌に投稿し、受理された。さらに、このフィルタの改良を行い、スパインイメージングの改良結果と合わせて論文投稿準備中である。 さらに、大規模スパインイメージングで得られたデータの一部を解析し、単一細胞レベルで興奮・抑制バランスがどのように保たれているかを明らかにした。この結果をCell Rep誌に投稿し、受理された。
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