今年度は以下の2種類の研究を行った。 (1)昨年度はiPTF13bvnという超新星の親星の形成シナリオとして伴星がブラックホールであったという新たな説を提唱した。そして伴星として十分な質量のブラックホールが適切な距離に存在していた場合に主星がiPTF13bvnの観測的特徴を全て満たすような星に進化するということを示した。しかし、このシナリオはそもそも適切な質量で適切な距離にブラックホールが存在していたという大きな仮定に基づいている。今年度はこのブラックホールが形成される前段階の進化経路を調べる研究を行った。その結果、70太陽質量以上の星が15太陽質量程度の星と連星を組み、共通外層状態を経ることでiPTF13bvnの親星を作る条件を満たすような連星に進化する可能性があることがわかった。このことはiPTF13bvnの親星が非常に特殊な進化経路を経て進化したことを示唆しており、Ib型超新星で親星が発見された例が他にないことと矛盾しない。 (2)今年度後半は研究計画の通り、大質量連星系内における超新星爆発が伴星に及ぼす影響の系統的調査を行った。昨年度開発した新たな流体シミュレーションコードを用いて様々な質量、半径、構造を持った星を様々な連星軌道に置き、超新星爆風が伴星に衝突するシミュレーションを行った。そして、爆風が伴星に与えた運動量、剥ぎ取れた質量、伴星表面に降着する伴星由来の物質の量などを見積もり、そのパラメータ依存性を探った。先行研究では連星軌道や星の質量に対する依存性は調べられていたが、星の構造が結果に大きく影響すると予想されていた。本研究で星の構造に対する依存性を探ったことで具体的な運動量輸送や質量剥ぎ取りの物理的理解が深まった。
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